2012 Fiscal Year Research-status Report
『大峯縁起』の成立と享受についての研究 ―修験から修験道、そして教団へ―
Project/Area Number |
24520253
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Shujitsu University |
Principal Investigator |
川崎 剛志 就実大学, 人文科学部, 教授 (70281524)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 大峯縁起 / 修験道 / 役行者 / 国際情報交換(アメリカ) |
Research Abstract |
①本研究計画の予備報告として、日本仏教の事象に関わる諸分野の国内外の研究者が参加する国際研究集会(2013.5.17-18、ハーバード大学、アメリカ)で、『大峯縁起』に関する従来の研究成果を報告をした。国際的、学際的な視野から従来の研究成果を検証し、課題を浮き彫りにするためであった。文献学の立場から修験道を解明する方法は新鮮だとの評価を得た一方で、通史的な視野をもち、古代の山林修行との関係も提示すべきだとの批判を受けた。 ②『大峯縁起』享受史上最大の問題である、白河院の『大峯縁起』御覧説の出現(『熊野権現金剛蔵王宝殿造功日記』ほか)の背景を解明する作業の一環として、寛治六年の金峯山御幸の記録を整理、分析した。とりわけ、研究協力者のヘザー・ブレアが再発見した、大江匡房(この御幸に供奉し、願文を草した)の参詣の記録(宮内庁書陵部蔵『不知記』の一部)に注目し、ブレアを中心に学際的な共同研究の体制を整えた。ブレアと川崎のほか、上島享氏、近本謙介氏、馬耀氏に協力を仰いで、原本調査、翻刻、読解を行い、基本的な位置づけを了えた。2013年4月にシンポジウムを開く予定である。 ③役行者の事績を含む院政期の縁起・記録群を概観し、それらのなかで『大峯縁起』を相対化する作業を始めた。その一環として、『当麻寺縁起』『箕面寺縁起』の基礎研究に着手した。 ④真福寺展(名古屋市博物館)の図録を執筆し、『大峯縁起』と関連の深い熊野金峯縁起群六軸(国重要文化財)について、最新の研究成果を社会に向けて発信した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
①海外研究集会での報告は、予想通りの成果を収め、今後の課題が浮き彫りになった。国際的、学際的な視野から、その課題を克服する最適の方法を模索している。 ②研究協力者のヘザー・ブレアを中心に進めた、白河院金峯山御幸の「江記逸文」に関する共同研究は順調に進み、第一級の文献資料の基礎研究として、日本文学、日本史学、宗教学など、諸学界に提示できる水準に達した。 ③『当麻寺流記』『箕面寺縁起』の基礎研究は順調に進展しており、成果報告の場も確定している。 ④『大峯縁起』関連資料の収集、整理作業を予定通り進めてきたが、古代・中世の新資料の発見には至っていない。
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Strategy for Future Research Activity |
①『大峯縁起』の享受史解明の一環として進めてきた、寛治六年白河院熊野御幸の「江記逸文」に関する共同研究の成果をシンポジウムで報告し、日本文学、仏教史学、建築史学を横断する学際的議論に発展させる。 ②当初の計画では、鎌倉時代後期における『大峯縁起』享受の解明に重点を置く方針だったが、昨年度の成果から、院政期における『大峯縁起』出現の解明に重点を置くのが先決であり、また有効だと判断した。具体的には、院政期に多数現れた役行者関連の記録と縁起を概観し、『大峯縁起』を相対化する作業に重点を置く。特に「当麻寺流記」「箕面寺縁起」の解明を最優先課題とする。奈良国立博物館特別展「當麻寺―極楽浄土へのあこがれ―」の公開講座(2013.5.4)で、「当麻流記」の研究成果を社会に向けて公開する予定である。 ③大峯・葛木修験の文化財の調査は、研究協力者の大河内智之によって着実に進められている。その調査で解明された文化財の特長や意義が『大峯縁起』の出現と享受にどのように関わるのか、議論を深めていく。 ④最終の平成26年度には、本計画全体の研究成果の概要を海外の学会等で公表するとともに、基礎作業の成果を多くの研究者が利用しやすい形式で公表する準備を進める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
①物品費は、主に修験道関連図書、ルーペ等文献調査用機器、記憶媒体、事務用品の購入に使用する。 ②旅費は、主に研究集会「宗教とパフォーマンスをめぐる都市と地域」(10月、イリノイ大学、アメリカ)での報告、国内での文献調査(1回)、研究協力者との打合せ(1回)に使用する。 ③人件費・謝金は、主に「大峯縁起関連記事一覧」、「院政期の役行者関連記事一覧の」のデータ入力作業のアルバイト料、及び海外での報告のための和文英訳料に使用する。 ④その他は、主に、文献資料の写真焼付費、文献複写費、資料閲覧料に使用する。
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Research Products
(3 results)