2013 Fiscal Year Research-status Report
『大峯縁起』の成立と享受についての研究 ―修験から修験道、そして教団へ―
Project/Area Number |
24520253
|
Research Institution | Shujitsu University |
Principal Investigator |
川崎 剛志 就実大学, 人文科学部, 教授 (70281524)
|
Keywords | 大峯縁起 / 修験道 / 役行者 |
Research Abstract |
当該課題について、主に①『大峯縁起』の記述内容の研究、②③『大峯縁起』を生み出した時代背景と関連する縁起の研究を行った。 ①後白河院政期に現れた『大峯縁起』には、白河院金峯山御幸の事蹟が独自の文脈で書き換えられ、意味づけられている。その記述の背景と飛躍を精確に測るべく、上記御幸の実体と記録、及び記憶に関わる文献資料を再確認し、その成果を説話文学会例会(4月、慶應義塾大学)においてシンポジウム形式で報告した。研究代表者がコーディネーター、研究協力者1名が報告をつとめた。 ②『大峯縁起』は、修験道の祖、役行者から伝えられた点が強調されており、それゆえ、縁起の持主はもとより、他者も否定しがたい書物として機能した。それは『大峯縁起』固有の特徴ではあるが、それに類する現象、すなわち役行者の事蹟を霊山や寺院の由来として表明する現象が院政期にはいくつか認められる。そのひとつが奈良時代の公的文書の体をとる『当麻寺流記』の出現である。研究代表者が同書出現の経緯と仕掛けを解明し、中世文学会秋季大会(10月、ノートルダム清心女子大学)で発表した。 ③院政期、役行者の祖師化が、山伏の間だけでなく、日本の仏法・王法を支える天皇家・摂家及び京・南都の大寺院をも巻き込むかたちで進められた。その結果、『大峯縁起』『当麻寺縁起』『箕面寺縁起』以下、役行者の事蹟を喧伝する縁起が次々と世に現れた。その運動を京・南都の寺院と霊山との間の双方向的運動として捉え、全体の見取り図を示した。研究代表者が、国際研究集会(10月、米国イリノイ大学)で報告した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
①白河院金峯山御幸の記録と記憶に関する研究の成果を、4月のシンポジウムで公表し、有益な批正と助言を賜った。その報告に基づく論文2点(研究代表者、研究協力者)が『説話文学研究』に掲載される予定である(入稿済)。 ②院政期における役行者の祖師化に関する研究の成果を、10月の国際研究集会及び中世文学会で発表した。異なる視点からそれぞれ有益な助言を賜った。後者の報告に基づく論文1点が『中世文学』に掲載される予定である(入稿済)
|
Strategy for Future Research Activity |
①研究計画の最終年度にあたり、EAJS(ヨーロッパ日本研究協会)大会(8月、スロベニア、リュブリャナ大学)のパネルで研究成果を公表する予定である。同パネルは、研究代表者、研究協力者、及びスイスの修験道研究者の計3名で構成される。縁起という書物が修験道の成立に大きく寄与した事実を、国際的、学際的に議論し、評価する最良の機会の一つと考えている。 ②日本では、11月に和歌山県で公開シンポジウムを開催する準備を進めている。研究代表者、研究協力者が参加する予定である。他の分野の研究者にも依頼し、本研究が学際的な視野から批正、評価される場としたい。 ③これまで学会等で報告した内容について、補足調査を行った上で論文を公表する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
①修験道関連図書を市場価格より安く購入できた。 ②国際学会の論文の翻訳料を年度内に支払う予定だったが、間に合わなかった。但し、論文の締切は次年度なので、計画を変更する必要はない。 EAJS大会(2014年8月、スロベニア、リュブリャナ大学)での報告が内定したので、論文執筆の準備、翻訳料、及び旅費を中心にこれを使用する。
|
Research Products
(3 results)