2014 Fiscal Year Research-status Report
『大峯縁起』の成立と享受についての研究 ―修験から修験道、そして教団へ―
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24520253
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Research Institution | Shujitsu University |
Principal Investigator |
川崎 剛志 就実大学, 人文科学部, 教授 (70281524)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 大峯縁起 / 修験道 / 役行者 / 国際情報交換 |
Outline of Annual Research Achievements |
主に①『大峯縁起』の享受史の研究、②関連する縁起の研究、③平安・鎌倉の山岳信仰史の研究に大別して、研究実績の概要を報告する。 ①後白河院政期に現れた『大峯縁起』の享受史に関する資料は収集したが、その整理と成果の公開には至らなかった。 ②従来、『大峯縁起』は他本にない特異な内容の記事をもつ点で注目されてきたが、本研究の成果によって、日本仏法史の枠組みのなかで、修験道の祖、役行者を顕彰する基本姿勢については、似通った性格をもつ縁起が他にも存することが判明してきた。そこで、まず『当麻寺縁起』について、次に『箕面寺縁起』について検討し、平安時代後期から鎌倉時代にかけて、役行者が日本仏法史上の正統に位置づけられていたことを解明した。よって以後、そうした考えが浸透していたことを前提に、『大峯縁起』の偽撰と享受について評価する必要がある。 ③平安・鎌倉期の修験道史については、それを修験道に限定せず、山岳信仰史として捉えなおすことが有効だと考え、主張してきた。そうした立場から、9・10世紀、当時第一級の神像群が熊野早玉社に奉納された事実に注目し、仏教史・美術史の研究者と協力して、この現象を再評価するシンポジウムを開催した(2014.11.9、和歌山県立近代美術館)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
個々の成果(江記逸文の研究、当麻寺縁起の研究、箕面寺縁起の研究ほか)を見ると、当初の予想を上回る点も多々あったが、それら個別研究に大きな時間と力をさかざるをえなかったため、またそこで得た新たな成果を消化するだけの時間的余裕がなかったため、総体的な情報の整理と公開、総論の記述にまでは至らなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
1年の期間延長を認められたので、この期間内に、研究の目的に照らして達成度が不十分であった、「大峯縁起」の享受に関する情報の整理と公開、研究課題と密接に関わる総論的記述を行う。
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Causes of Carryover |
全体としては順調に研究を進めてきたが、修験道史に関する最新の研究成果(本研究及び「聖護院門跡の名宝」展ほか)を確認し、それを摂取する時間的余裕がなかったため、『大峯縁起』の享受に関する基礎データの作成と公開への作業を中断した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
①「聖護院門跡の名宝」展に出品された資料の検証、及び関連する資料と情報の収集、②基礎データ入力作業に使用する。
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Research Products
(6 results)