2014 Fiscal Year Research-status Report
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24520258
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Research Institution | Ishikawa National College of Technology |
Principal Investigator |
高島 要 石川工業高等専門学校, その他部局等, 教授 (80124022)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 煕朝詩薈 / 友野霞舟 / 近世漢詩 / 漢詩総集 / 漢詩別集 |
Outline of Annual Research Achievements |
1,『煕朝詩薈』の伝本研究について、前年度までの内閣文庫蔵旧昌平坂学問所蔵の自筆写本、国会図書館蔵の2種の伝本研究の成果に加えて、静嘉堂文庫蔵、尊経閣文庫に写本が伝わることを確認し、今後の伝本調査の方向性を検討した。基本となる旧昌平坂学問所蔵の自筆写本と、これら他の伝本との関連性について検討することは今後の課題となる。 2,『煕朝詩薈』が編纂に用いた資料である典拠詩集の調査では、総集については、『煕朝詩薈』全体に亘って典拠となる詩集をほぼ特定した。別集については、巻五十三以降の大半の詩人について、ほぼ典拠詩集が明らかになった。 3,『煕朝詩薈』の編集について、一つの巻の中核を成す作者詩人の詩の採択を契機として、その系に属する詩人が採択され、関連する詩集が用いられる等、巻単位の編集方法の一端が明らかになった。『煕朝詩薈』の各巻は、別集を典拠にして少数の詩人で詩人あたりの詩は多数採択される巻と、総集を典拠にして多数の詩人で詩人あたりの詩は1乃至数首という少数の詩が採択される巻と、その混合タイプの巻と、おおよそ三様の編集方法であることが明らかになった。 4,『煕朝詩薈』巻四を詳細に分析した。ここでは、一つの藩に限られた総集である『南紀風雅集』からの採択の様相について明らかにし、他の巻も含めて『南紀風雅集』から採択された詩人を特定することができた。このような一つの藩に限られた総集からの採択は、ほかにも『楽ハン集』『絃歌余韻』などがあり、それらの様相についてもほぼ実態を確認した。 5,『煕朝詩薈』の巻五十までについて、詩人名・詩題・作品冒頭一聯詩句の電子化テキストの素稿を作成した。継続して進行している、詩人名・詩題・作品のデータベース作成の基礎となるものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
26年度は、基礎的研究の3年度目にあたる。伝本及び本文に関わる研究については、(1)引き続き『煕朝詩薈』の国会図書館蔵本の2種の伝本の他、静嘉堂文庫蔵、尊経閣文庫に写本を確認し、内閣文庫蔵本との関連性を検討することの展望を立てた。(2)『煕朝詩薈』の基本伝本である内閣文庫蔵本に基づいて、『煕朝詩薈』編者による「錦天山房詩話」の電子化テキストを作成し、作者詩人の伝記的研究の基礎資料とした。(3)作品検索データベースの作成を想定して、詩人名・詩題・作品冒頭一聯について、前年度の電子テキスト化を承けて、50巻までを作成した。 典拠詩集の特定研究については、引き続き『煕朝詩薈』正編の典拠となった漢詩集の資料収集を行ない、(4)総集については、『煕朝詩薈』全体に亘って典拠となる詩集をほぼ特定した。(5)別集については、巻五十三以降についてその大半の詩人の典拠詩集を確認した。(6)総集・別集ともに実際に編纂に用いられた漢詩集資料が、旧昌平坂学問所蔵の諸本であることを前年度までの成果に引き続き確認し、確定した。 以上の基礎的な研究が本年度実施のものであるが、その際、(7)一藩に限られた総集が用いられていること、具体的には『南紀風雅集』からの採択の様相を詳細に分析したこと、(8)編纂方法は巻によって、別集典拠型と総集典拠型とがみられること、(9)編者は幕府の学問所を基盤として編纂にあたっていること等の付随的な成果を得た。 以上は年度計画に照らして、(1)(2)(3)(4)については、ほぼ計画に沿って実施。(5)については、完了には至らないが、(6)にいう、直接の典拠詩集の所在が多数に置いて確定できたことで、調査活動を加速できること。(7)(8)(9)については、基礎的研究をふまえて、編纂方法等の一部文学史的研究に及んだもの。 以上、計画に照らして、ほぼ順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は当初計画で、『煕朝詩薈』の諸伝本と漢詩作品に関わる基礎的研究(方法甲)。『煕朝詩薈』の各収録詩人の小伝・評伝についての基礎的研究(方法乙)。詩人の面からの文学史考察、『煕朝詩薈』の編纂意義、近世期における漢詩総集編纂の意義の考察等、総じて文学史的分野の研究(方法丙)という、3つの方法を核として実施し、はじめ3年度は基礎的研究(主に方法甲・乙)を中心に進め、後の2年度は文学史的研究(主に方法丙)を中心に進めるとしてきた。その大要について変更はない。3年度目にあたる26年度においては、基礎的研究において、典拠詩集特定について、直接編纂に用いられた詩集のほとんどは旧昌平坂学問所蔵の詩集であることをほぼ確定した。また、総集を典拠とする場合と別集の場合とで、作者詩人の位相の開きを考慮できることも確認した。また、典拠が一藩に限られた総集である場合の実相も確認した。 これらを承けて今後、次の点に留意して、研究を推進させたい。 1,『煕朝詩薈』の典拠詩集の特定については、内閣文庫旧昌平坂学問所蔵本の総集・別集を、念頭において進めることができる。具体的には「内閣文庫目録」(書目)の側から、詩集名を特定し調査することで、研究を加速させことができる。 2,作品検索データベースの作成を想定しての、詩人名・詩題・作品冒頭一聯についての電子テキスト化を加速させる。これによって特に、詩人の伝記的データの作成について、研究を深化させることができる。 3,文学史的分野の研究(方法丙)について、基礎的研究の成果である典拠詩集や巻の構成から伺える詩人群などの考察を、文学史的研究に有機的に関連づけ、同研究を効果的に進める。
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Causes of Carryover |
年度計画の「作品検索データベース作成を想定しての、詩人名・詩題・作品冒頭一聯についての電子テキスト化」について、『煕朝詩薈』の巻五十までの素稿を作成したが、残りの巻についての作業は継続していることに合わせて、研究者自身による作業の有効性もあって、業者委託に至らなかったこと。「電子化テキスト作成支援ツール」は、現段階の作業では引き続き既存のツールで可能だったこと。また、調査活動を、日程等の関係で一部先送りしたこと。 以上の事由による。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度にあっては、年度計画にある作業に加えて以下の作業を補充する。「作品検索データベース作成を想定しての、詩人名・詩題・作品冒頭一聯についての電子テキスト化」とは別に、詩人の伝記的研究に関する情報の電子テキスト化を進めること。「典拠詩集の調査」の作業活動を、当初予定の図書館・文庫に加えて範囲を一部拡充して実施するすること。 次年度以降の作業の促進のために、資料の複写撮影のための機材を一部補充する。
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Research Products
(2 results)