2015 Fiscal Year Research-status Report
本文と絵画を通じて形成された伊勢物語場面理解の研究
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24520261
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Research Institution | National Institute of Japanese Literature |
Principal Investigator |
藤島 綾 国文学研究資料館, 研究部, 特定研究員 (80599556)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 伊勢物語受容 / かるた / 伊勢物語絵 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度は、研究実施計画にもとづき、伊勢物語カルタの図様を主対象とする分析と論文執筆を行った。209枚の絵札の図様がどのような典拠に拠っているか、また、いかなる物語理解を可視化したものかという点については、従来必ずしも明らかではない。その実態をふまえて、これらを解明することを目的とした。 本課題の平成24年度以降の実績から、伊勢物語カルタの図様には、中世の注釈書で否定されるような場面理解が含まれていることが判明した。しかし、注釈書で否定されたその場面理解が、一方で、江戸時代の人々の間には流布していたことを、カルタの絵札や『春雨物語』の記述などから検証した。そして、前近代における伊勢物語の場面理解を把握するためには、注釈書の記述だけではなく、多様な分野の資料を検討し、総合的な判断を下す必要があると述べた(「かるたの中の伊勢物語」)。 また、それとは別に、カルタ札の装飾に注目し、特定の和歌の札に装飾を凝らす現象があることを指摘したうえで、このような装飾と和歌の評価が深く関わっている点を明らかにした。また、そのような札のなかに認められる特異な図様を指摘し、その典拠について分析と検討を行った(「二枚の絵札―伊勢物語かるたをめぐって―」)。 さらに、上記論文執筆に際して、歌ガルタ誕生への関与が知られていながら、伝記未詳とされてきた「しうかく院」について調査し、その略歴を明らかにした。 これらと平行して、資料調査、撮影、収集等を行った。あわせて、各機関で開催された企画展の観覧等を通じて文学の絵画化について検討した。 平成24・25・26・27年度の実績について総括し、さらなる伊勢物語絵と本文に関する情報の拡充のために、次年度も資料調査と収集を続行することとした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24・25・26年度に行った調査や作業を通じて確認してきたカルタ、写本、版本の持つ伊勢物語絵について、共通点や相違点を分析検討し、注釈書との比較を行いつつ、それらが示す物語場面理解について論文を執筆した。また、カルタ研究において伝記未詳とされてきた人物について明らかにした。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24・25・26・27年度の実績をふまえ、分析を行うとともに論文を執筆する。また、ひきつづき必要に応じた資料調査・撮影等を行い、伊勢物語絵と本文に関する情報の一層の拡充を図る。
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Causes of Carryover |
資料整理を研究者本人が行ったことで、同作業に関する人件費・謝金が発生しなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
伊勢物語絵と本文に関する資料調査と収集を行う予定であり、その経費として使用する。
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