2013 Fiscal Year Research-status Report
初期近代イギリス劇における視覚的表現手法の演劇空間論的観点からの研究
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24520265
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
市川 真理子 東北大学, 国際文化研究科, 教授 (80142785)
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Keywords | 劇場 / 舞台 / 上演 / ト書き |
Research Abstract |
初期近代イギリス劇が上演されたロンドンの劇場では、現代のような大掛かりな舞台装置は使われなかった。しかしそこで上演された作品を細かく分析すると、舞台構造や小道具等を巧みに利用した初期近代イギリス劇特有の空間的メタファーとも呼べるような視覚的表現を駆使していたことがわかる。本研究は、現存する劇テクストを演劇空間論的観点から調査することにより、当時の劇作家たちや劇団が持っていた視覚的表現手法のレパートリーを解明することを目的とする。本年度の研究実績として、研究調査、学会での研究発表、および論文の刊行をあげることができる。以下それぞれの概要を述べる。 研究調査:ブリティッシュ・ライブラリーおよびフォルジャー・シェイクスピア・ライブラリーにおいて、演劇テクストの初期印刷本およびマニュスクリプトの研究調査を行い、劇場ないしは舞台の構造を利用した視覚的手法を示す有益な例を収集した。 学会での研究発表:再建されたブラックフライアーズ劇場を会場として行われた第7回ブラックフライアーズ学会において発表を行った。シェイクスピアの劇にも使われている、少数の俳優が舞台背後のドアから姿をのぞかせることによって群衆や軍隊などを表象するというテクニックの実効性を、俳優たちおよび学会の出席者たちの助力を得て実験をし、確認することができた。 論文の刊行:"Shylock and the Use of Stage Doors" が国際雑誌 Theatre Notebook 67 (2013) に掲載された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
国際学会において発表を行ったこと、また国際雑誌に論文が掲載されたことにより、海外の優れた研究者たちから有益なフィードバックを得ることができた。そのことにより新たな問題も見つかり、さらに研究の発展が見込まれる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も引き続き以下の営為を行う。 1.劇テクストの調査・分析によるデータ収集:作品テクストを一つ一つ読みながら、現在把握しているいくつかの種類の手法の例を収集するとともに、新たな種類の手法の発見にも努める。 2.関連する諸研究の調査および研究:関連する諸研究の調査および研究データを分析し議論を深めていくために、シェイクスピア時代の劇場、舞台、演技や、劇団などに関する諸研究は当然ながら、演劇全般を対象とする空間論だとか、記号論や表象論なども視野 に入れた調査および研究を行う。シェイクスピア時代の演劇空間における視覚的表現は、広くヨーロッパのルネサンスの美術などともかかわることなので、今後はその分野の研究にも視野を広げてるつもりである。 3.論考の作成および理論の構築:オリジナル・ステイジングや関連諸分野の研究者たちのリヴューを求めるため、研究の一端をなす問題に関して新たな論文を書く。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初計画していた国内出張をすることができなかったこと、および購入を予定していた図書の出版が遅れ、購入を延期したためである。 次年度経費と合わせて、研究調査や研究発表に必要な出張を行うとともに図書の購入に充てる。
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Research Products
(3 results)