2014 Fiscal Year Annual Research Report
初期近代イギリス劇における視覚的表現手法の演劇空間論的観点からの研究
Project/Area Number |
24520265
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
市川 真理子 東北大学, 国際文化研究科, 教授 (80142785)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 劇場 / ステイジング / 劇テクスト / ト書き |
Outline of Annual Research Achievements |
シェイクスピア劇をはじめとする初期近代イギリス劇が上演されたロンドンの劇場では、現代のような大掛かりな舞台装置は使われなかった。しかし、ト書きやせりふに内在する情報を細かく分析すると、当時の劇場の舞台構造を巧みに利用した初期近代イギリス劇特有の空間的メタファーとも呼べるような視覚的表現を駆使していたことがわかる。主に劇テクストの分析を通して、こうした表現手法の解明を目指した。今年度は夏季と冬季に British Library において、劇テクストの分析を行い、特に現存するマニュスクリプトから議論に有効な例をいくつか得て、舞台背後の左右のドアの使用方法に関する手法に関する考察を深めることができた。 また、昨年度、アメリカ合衆国ヴァージニアに再建された Blackfriars theatre で開催された学会において、左右のドアの使用に関する手法に関して研究発表を行い、実際に俳優たちの助力を得て、その手法がどの程度有効であったかということを検証するための実験をする機会を与えられた。その実験によって得た成果を基に、今年度は屋内劇場で上演された劇を重点的に分析した。 こうした調査や研究を続けながら、中央開口部を被う掛け布やその他の舞台道具の使用のような、ある程度流動的な条件についても考察する必要があることを認識した。今後発展させていくべき課題であるが、舞台背後のカーテンは、いわゆる「発見」や「立ち聞き」ないしは「覗き見」のシーン (discovery scenes; observation scenes) などのアクションのために必要だったばかりではなく、シーンの雰囲気や場所の設定の伝達のためにも重要な機能を果たしていたことをうかがわせる例が見つかっている。これらのデータを基に論考を作成する予定である。
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Research Products
(3 results)