2012 Fiscal Year Research-status Report
〈知識の枠組み〉と南北戦争前アメリカ散文―〈ライフ〉をめぐる知識史
Project/Area Number |
24520270
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
鷲津 浩子 筑波大学, 人文社会系, 教授 (30149372)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 知識の枠組み / 知識史 / 南北戦争前アメリカ散文 / ライフ / 麻酔の歴史 / 生/死 / 法医学 |
Research Abstract |
【共同研究】(企画と発表) 本年度のテーマとして〈ライフ〉をとりあげ、筑波大学アメリカ文学会と共同研究を行った。9月の英語によるシンポジウムでは、〈ライフ〉の諸側面のうち、おもに〈語られるライフ〉と〈病理学的ライフ〉について発表と討論を行った。第一部の研究発表では、竹谷悦子"Langston Hughes Langston Hughes as a Soviet Spy”クリスティ・コリンズ“(Disrupting) Life course approaches”ヘラト・ヘーゼルハウス"The Rise of Immunology: The Strange Case of Dr. Jekyll and Mr. Hyde" 鷲津浩子"Dead or Alive: Invention of Anesthesia and Its Cultural Impact on Life”の4発表が行われ、第二部のラウンドテーブルでは討論が活発に行われた。その結果、リプロダクタビリティとエヴィデンスの問題が注目されるにいたった。この成果を受けて、3月の研究発表会では、この二つの問題をおもに言語との関連で扱うことになった。 【個人研究】 6月9日、フィレンツェ(イタリア)で開催されたアメリカ3学会(ホーソン、ポウ、エマソン)の共同学会で、1846年にマサチューセッツ総合病院で初めて成功したエーテル麻酔がポウの短編とどのように関連しているかを論じた"Dead or Alive: (Pre-)Anesthetic Trance in Edgar Allan Poe’s Stories”を発表した。また、9月29日にはミルウォーキー(アメリカ)で開催された文学・科学・芸術学会で、災害をいかに〈わかる〉かを論じた"How to Tame a Beast"を発表した。 September 29)
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
5年計画のうちの初年度は、19世紀半ばに発明された麻酔を扱った。これは、ライフを規定する〈非‐生〉としての死に極めて近い状況を人為的に作り出すことによって痛みを感じなくさせる方策であり、この意味で生と死との境界を探るのにふさわしいものと言えるからである。 2年度には、麻酔から派生した問題として、〈生〉あるいは〈非‐生〉としての死をどう認定するかという問題を取り扱う。生と死との境界はどこにあるのか、生と死を認識するためには何が必要か、死の原因(死因)を特定するためにはどんな手続きが必要か、死因の特定は死の定義にどのような影響を与えたのか、死因の特定や死の認定のための方策にはどんなものがあるか、などが具体的な問いとなる。このために、19世紀初頭の法医学と同時期に誕生した探偵小説の関連を考察する。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究もまた、筑波大学アメリカ文学会との共同研究と個人研究の両面から進めていく。共同研究では〈ライフ〉をめぐるディシプリンの成立について、たとえば生物統計学、言語哲学、天文学、地理学などを取り上げる。個人研究では、法医学成立の歴史をたどり、その英米法の体系や裁判形態との関連性を探り、そこから生と〈非‐生〉の認定に関する〈解釈〉とその解釈から派生した探偵小説との結びつきを考察する。 ここで、探偵小説という文学テクストが重要なのは、法学も医学も具体的な事例や症例の解釈にかかわる学問として19世紀前半に再定義されたと考えられるからである。すなわち、〈生〉と〈非‐生〉の問題は、限りなく文学テクストの近似値となっているのである。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度の研究費のうち、一番大きな比率を占めるのは、海外学会での口頭発表のための旅費と滞在費である。7月中旬には北京での国際英文学大学教授学会において法医学の成立と探偵小説の誕生についての口頭発表を行い、9月末にはミシガン州ロチェスターでの19世紀学会においてロマン派における法医学の概念について口頭発表の予定である。1週間程度のリサーチのためのアメリカ滞在も計画している。 また、勤務先の建物が耐震構造のため建て替えを迫られているため、研究室の書籍のデジタル化を積極的に行いたい。
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Research Products
(5 results)