2013 Fiscal Year Research-status Report
〈知識の枠組み〉と南北戦争前アメリカ散文―〈ライフ〉をめぐる知識史
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24520270
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
鷲津 浩子 筑波大学, 人文社会系, 教授 (30149372)
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Keywords | 知識の枠組み / 知識史 / 化学麻酔 / メスメリズム / 法医学 / エドガー・アラン・ポウ / ナサニエル・ホーソン |
Research Abstract |
19世紀南北戦争前の散文をとりあげて、その時代の〈知識の枠組み〉の中で論じること、さらにはその時代の〈知識の枠組み〉がいかに知識史の中で形成されたかを考察すること、これらの作業によって個々のテクストを読み解くことという研究方法には変わりがない。 平成25年度は研究課題「ライフ」の最終年度であったので、まとめにあたる論文を出版した。これはもともとフィレンツェの国際学会で発表したものを論文にしたものである。この論文では、1846年に始めてボストンで公開実験に成功した化学麻酔をとりあげ、それが当時再流行していたメスメリズム(催眠術)とどうかかわっているか、またその関連がエドガー・アラン・ポウの催眠術や生前埋葬を扱った作品にどのような影響を与えているかを考察した。この論文が掲載された『アメリカ文学評論』24号の編集(掲載論文12編、うち英語論文7編)も手掛けた。 また、平成26年度からの課題「ロー(Law)」への橋渡しとして、生死にかかわる法律と医学の接点として法医学をとりあげ、その中間発表として、清華大学(北京)で行われた国際学会で招聘による発表をおこなった。これは、19世紀初頭に基盤が築かれた法医学のうち、主にセクシュアリティに関する問題点がいかにエドガー・アラン・ポウの「マリー・ロジェの謎」に投影されているかを論じたものである。平成26年度に論文として刊行予定。 さらに、19世紀初頭の法医学のもう一つの側面「毒薬学」については、ナサニエル・ホーソンの「ラパチーニの娘」をとりあげて海外学会で発表の予定である。このほかにも、筑波大学の同僚2名と院生2名計5名で、東日本大震災を題材としたパネルを海外学会で発表することが決まっている。 また、これまでの研究成果をまとめた単行本(仮題『文色と理方』)の準備を進め、来年度あるいは再来年度の出版を目指している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「ライフ」については論文の形で発表することができた。また、「ライフ」から「ロー」への橋渡しとして生死にかかわる法律と医学の接点として法医学をとりあげ、19世紀初頭に問題となったセクシュアリティと毒薬学を純にとりあげている。この先は、今ひとつの問題として狂気をとりあげる予定である。この3問題をカヴァーすれば、19世紀前半の法医学をほぼ概観できると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
19世紀南北戦争前の散文をとりあげて、その時代の〈知識の枠組み〉の中で論じること、さらにはその時代の〈知識の枠組み〉がいかに知識史の中で形成されたかを考察すること、これらの作業によって個々のテクストを読み解くことという研究方法には変わりがない。 平成26年度は、本年度に口頭発表した法医学(セクシュアリティ)とポウの短編についての論文を刊行すること、法医学(毒薬学)とホーソンの短編について学会発表をすることがすでに決まっているが、さらに法医学(狂気)についても基本研究を始めたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
夏季休暇中の海外出張を取りやめたため。 海外学会での発表が2回予定されているので、その費用の一部に充てる。
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Research Products
(3 results)