2014 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
24520271
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
竹谷 悦子 筑波大学, 人文社会系, 教授 (60245933)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | アフリカ系アメリカ文学 / 地理的想像力 / 環太平洋 / 帝国 / 人種 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、アフリカ系アメリカ文学における「ブラック・パシフィック・ナラティブ」の系譜とそれを可能にした環太平洋をめぐる大戦間の地理的想像力を探るものである。二十世紀に「太平洋共同体」という名称を与えられ、インターナショナルなコミュニティへと変容していった太平洋の地域システムと体位法的関係を持ちながら、アフリカ系アメリカ文学がどのようにブラック・パシフィックという「想像の共同体」を生成していったのかを検証する。
本年度は第二次世界大戦末期のウォルター・ホワイトの活動、とりわけ、「ニューヨーク・ポスト」紙の従軍記者として、1944年末から4ヶ月にわたり、グアムなどの太平洋の島嶼の戦地に赴き取材したメモ、記事原稿、書簡等から、アフリカ系アメリカ人にとっての太平洋戦争の意味を考察した。この研究成果は、英文の単行本の最終章に組み込まれ、アメリカの大学出版局から、The Black Pacific Narrative: Geographic Imaginings of Race and Empire between the World Warsとして刊行された。
さらに本研究では、冷戦期まで射程を拡大し、航空時代のアフリカ系・アメリカ文学における地理的想像力を理解するための"archipelagic black global imaginary" という概念の導入を試みた。「鉄のカーテン」、そしてアジア大陸で「竹のカーテン」がおりる冷戦期におけるアフリカ系アメリカの地理的想像力の行方は、今後改めて精緻な分析が必要となるだろう。
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