2013 Fiscal Year Research-status Report
越境を超えて-ネットワーク理論に基づく20世紀合衆国文学史の再構築
Project/Area Number |
24520272
|
Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
宮本 陽一郎 筑波大学, 人文社会系, 教授 (30143340)
|
Keywords | メロドラマ / 冷戦 / アメリカナイゼーション / 戦争記録画 |
Research Abstract |
メロドラマ的想像力のネットワークと冷戦文化の形成に関する論文を脱稿した。ヨーロッパ中世に起源をもつメロドラマは、ヨーロッパとアメリカを往還するなかで民衆文化・大衆文化を形成した。とりわけ冷戦期のアメリカでは、ヨーロッパから戦時期に亡命した、ダグラス・サークをはじめとする映画人たちによって、ハリウッド映画のなかに「ファミリー・メロドラマ」という独自のジャンルを生み出す。このジャンルにおけるドラマトゥルギーは、単に映画の一ジャンルの特徴に留まらず、アイゼンハワー時代のアメリカ合衆国が全世界に発信する「ハッピー」な文化と、核の恐怖とを結節しているという点において、メロドラマ的想像力のネットワークは「アメリカ」と「冷戦」をふたつながらに構築するものである。 以上の論を完成させるプロセスとして、関連する論文・資料を収集するとともに、大学院において「冷戦家族」をテーマとする授業を行った。(履修者の研究分野に配慮し、当初予定した「1946年」をテーマとする授業は26年度に延期した。) 第二次大戦期のプロパガンダ芸術家たちのネットワークについての研究は本年度も続行し、3月にワシントンに出張し、議会図書館および合衆国陸軍軍事史センターで資料収集を行った。合衆国陸軍軍事史センターではこれまで同定されていなかった新資料を発見することができた。これらの新資料は、日米のプロパガンダ画家たちが、1946年1月に、メトロポリタン美術館において日本の「戦争記録画」を集めた展覧会を企画していたことを裏づけるものである。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度より、文芸・言語専攻長を務めることになり、本務のため海外渡航が著しく制約されるとともに、そこにエフォート率を充てざるをえなくなった。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の中心となる、第二次世界大戦直後のアメリカ文学研究の生成過程の分析に着手する。 大学院授業で「1946年」をテーマとする授業に着手するとともに、適切な大学院生を資料調査に海外派遣し、また社会主義圏からの留学生の協力をえて、トランスナショナルな視座からの研究を行う。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
専攻長としての職務のため、および夏期に病気のため入院と長期静養が必要となったため、予定していた海外調査が実行できなくなったため。 合衆国陸軍軍使センターでの今年度の調査を通じ、同軍フォート・ベルヴォワの倉庫に、第二次大戦中の従軍画家たちに関わる重要文書が保管されている可能性が高いことが判明した。一般の閲覧は認めていないので、同センターと交渉中である。許可を得られればフォート・ベルヴォワに出張し調査を行う。未使用額はこのための旅費に主に充てる予定である。
|