2015 Fiscal Year Annual Research Report
越境を超えて-ネットワーク理論に基づく20世紀合衆国文学史の再構築
Project/Area Number |
24520272
|
Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
宮本 陽一郎 筑波大学, 人文社会系, 教授 (30143340)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | アメリカ文学 / 文化ネットワーク / 冷戦 / アメリカ文学史 |
Outline of Annual Research Achievements |
本プロジェクトに基づく研究を集大成した単著『アトミック・メロドラマーー冷戦アメリカのドラマトゥルギー』を、彩流社より2016年4月に刊行した。同書は、ネットワーク文化論の立場から冷戦期アメリカを論じるものであり、アメリカ合衆国の文化のみならず、冷戦期におけるアメリカ文化の世界輸出、そして日本やアメリカにおける情動としての「アメリカ」を論じたものである。 これに先立ち、ニューヨーク公立図書館においてアルフレッド・ケイジンおよびアーチボルド・マクリーシュの書簡を調査した。これは上記単著の細部について裏付けを行うことが目的だったが、当初の目的を超えて、いわゆるニューヨーク知識人のネットワークについて、さらに今後研究を展開すべき領域があることが明らかになった。冷戦期のアメリカ研究の海外輸出に協力した知識人たちのなかにあった内部対立と、その軋みが冷戦以降の知の編制にもたらした影響は今後の発展的研究課題と言える。 2014年に刊行された論集 Hemingway, Cuba, and the Cuban Works(ケント州立大学出版)について複数の書評が発表された。Hemingway Review誌に掲載されたHilary K. Justiceの書評は、同書の扱う諸問題について、報告者の論文"'Papa' and Fidel Cold War, Cuba, and Two Interpretive Communities"が「最も充実した批評的視座として表現し」ており、同論文を巻頭論文とすべきであったと評価している。 プロジェクトの一環として、ネットワーク文化論を教育文化論として展開している三添篤郎氏(流通経済大学)を合衆国公文書館における調査に派遣するとともに、島文化研究の国際的研究拠点であるプリンス・エドワード島大学(カナダ)にクリステン・コリンズ氏(筑波大学)を派遣し、研究体制の拡充を行った。
|