2013 Fiscal Year Research-status Report
十九世紀末英国におけるウィリアム・ブレイク研究と日本研究との相関関係の探究
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24520273
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
佐藤 光 東京大学, 総合文化研究科, 准教授 (80296011)
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Keywords | 比較文学 / 英文学 / ウィリアム・ブレイク / 柳宗悦 |
Research Abstract |
2013年は柳に大きな影響を与えたバーナード・リーチを調査した。 柳とリーチに関するこれまでの研究において、リーチが柳に貸したブレイクの詩集がW・B・イェイツ編集の「詩神文庫」版であることは事実として確認されている。しかし、ここで新たな問いを立ててみた。なぜリーチはブレイクに興味を持ったのか。どのようにしてリーチはブレイクに出会ったのか。リーチのブレイク好きは、リーチの個人的嗜好にすぎなかったのか。それとも、ブレイク研究の黎明期にブレイクに夢中になった人々には、何らかの特有の傾向が見られるのか。 東京で1914年に出版された柳の『ヰリアム・ブレーク』を起点として、日本に伝播したブレイク熱を遡る探求は、バーナード・リーチからオーガスタス・ジョンを経てリヴァプールのジョン・サンプソンにたどり着き、三人が共通して1900年代の英国社会に対して違和感を持ち、その裏返しとして自由に対する憧憬を抱いていたことが明らかになった。また、その結果として三人が、ブレイクと「ボヘミアン」という組み合わせに魅了されたことが見えてきた。さらに、この探究の過程において、リヴァプール大学草創期のブレイク愛好家の人脈に連なるフレデリック・ヨーク・パウエルが、ブレイクと日本美術を好んだ、という事実が掘り起こされた。1900年代にブレイクに引き寄せられた人々にとって、ブレイク、「ボヘミアン」、日本趣味、そしてパウエルの事例に見られるように社会主義は、当時の英国社会からの自由を意味する記号として相互に関連していたことを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2013年度中に刊行できた論文は1本だが、2014年度以降に2本の論文を刊行予定(投稿済み)であり、未発表の原稿も公表に向けて順調に準備が進みつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
ウィリアム・ブレイク没後アレクサンダー・ギルクリストによる『ウィリアム・ブレイク伝』が刊行されるまで、ブレイクは忘れ去られた芸術家として位置付けられてきたが、大英図書館で様々な文献を調査したところ、従来の研究ではあまり注目されたなかった別のブレイク受容史があるらしい、ということが見えてきた。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
2014年3月にロンドンの大英図書館で19世紀後半におけるブレイク研究の実態を調査する予定だったが、ブレイク研究と日本との関わりについて想定していた流れとは異なるもう一つの流れが存在することがわかったため、まず日本側の関連する資料を探索し、その結果に基づいて英国で調べるべき資料を絞り込む、或いは広げることにした。予定していたロンドンでの資料収集は2014年夏に延期した。旅費として使用するはずだった金額の一部を、日本国内で入手可能な文献を購入するために使用した。 次年度使用額は2014年夏にロンドンで行う調査に充当する。
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Research Products
(1 results)