2014 Fiscal Year Annual Research Report
十九世紀末英国におけるウィリアム・ブレイク研究と日本研究との相関関係の探究
Project/Area Number |
24520273
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
佐藤 光 東京大学, 総合文化研究科, 准教授 (80296011)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 英文学 / 比較文学 / ウィリアム・ブレイク / 柳宗悦 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、19世紀末から20世紀初頭の英国におけるウィリアム・ブレイク研究と日本に対する関心とが、文化現象として部分的に表裏一体の関係にあったことを実証することにある。 本研究は、三段階に分けることができる。(1)ブレイク研究と日本研究の接点の探究。D・G・ロセッティ、W・M・ロセッティ、A・C・スウィンバーン、アーサー・シモンズのテクストを、ブレイク研究と「東洋」に対する関心という二つの側面から分析する。(2)柳宗悦のブレイク論の再検討。柳の著書『ヰリアム・ブレーク』だけでなく、柳が『白樺』に寄稿した美術関係の論文と(1)で分析した四名のテクストとを比較検討する。(3)大英博物館東洋部主任ローレンス・ビニョンにおけるブレイク理解と日本理解の研究。ローレンス・ビニョンのブレイク研究と日本研究の実態を解明して、ブレイクと日本がビニョンの中でどのように共存したのかを探る。また、書簡や日記等を通して、柳とビニョンの交流をたどり、両者の影響関係を明らかにする。 以上の調査から、物質的な豊かさを重視するヴィクトリア朝とエドワード7世時代の英国社会に馴染めない人々と、王立美術院の芸術観に違和感を持つ人々が、規範からの逸脱と自由を求めて、ウィリアム・ブレイクと日本美術に魅了された様子を浮き彫りにすることができた。そして、これらの人々のブレイク論の延長線上に、柳のブレイク研究が存在することも明らかになった。さらに、柳とビニョンは1929年にロンドンで出会っており、同年に柳がハーヴァード大学で行った講義と、ビニョンが東京帝国大学で行った講義のそれぞれに、文化的多様性を重視する姿勢が顕著に現れていること、また、その特徴は柳とビニョンが共通して関心を持ったブレイク思想に源があること、を明らかにすることができた。
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