2014 Fiscal Year Research-status Report
合衆国の芸術文化政策・文化戦略とアメリカ舞台芸術実践のポリティクス
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24520276
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
戸谷 陽子 お茶の水女子大学, 大学院人間文化創成科学研究科, 教授 (30261093)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 芸術文化政策 / 日米友好基金 / フルブライトプログラム / トルーマンドクトリン / 全米芸術基金 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、アメリカ合衆国舞台芸術の理論と実践における、ポリティクスの諸問題についての研究の一環として、国家的な文化戦略および自治体・非営利団体等公共の芸術文化助成のあり方を、演劇実践活動の(美学的・政治的)な戦略との関係性において歴史的に再検討し、合衆国の芸術文化政策・外交文化戦略との連動を明らかにすることで、この関係性をとらえなおし、舞台芸術論および現代アメリカ演劇史の文脈の中で、再度位置づけを試み、今世紀の展開を標榜するための新たな学術的指標を提示することにある。 平成26年度の研究計画は「外交政策としての芸術助成と教育制度における演劇」のテーマに沿い、第二次大戦から戦後のアメリカ合衆国の外交政策と芸術助成および文化政策を検討するというものであった。 そこで、NEAの設立と並行して、戦後民間で促進した文化外交に焦点をあて、大西洋両岸の文化交流を考察、一方で、東西冷戦の開始にともない、アジアと友好関係を結ぶこと太平洋以西の覇権を強化する外交政策をとった合衆国の対アジア文化政策を具体的に検証した。日米友好基金やフルブライトの人的交流とその成果を確認するため、これらの助成金や奨学金の交付の傾向について検証を開始した。その過程で同時期に開始した民間団体の助成(アジア文化財団、ロックフェラー財団、アジアソサエティ等)の内容と、合衆国が冷戦期に実行した文化外交が担った役割が大きいことも検証された。 年度計画では、全米にある2500あまりの大学の演劇学科を中心とした、高等教育の場での演劇実践教育と演劇制度のかかわりを芸術文化政策の視点から検証する予定であったが、限定的に大学の演劇学科の実践・研究者から情報の提供を受けた程度で、総括には至っていない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の計画に鑑み、①戦後民間で促進した文化外交に焦点をあて、大西洋両岸の文化交流を考察、東西冷戦期にアジアと友好関係を結ぶこと太平洋以西の覇権を強化する外交政策をとった合衆国の対アジア文化政策を具体的に検証した点ではおおむね予定通りに検証が進んだが、②全米にある2500あまりの大学の演劇学科を中心とした、高等教育の場での演劇実践教育およびリージョナルシアターと演劇制度のかかわりについて、加えて研究考察を言語化する作業が滞っており、総括には至っていないため。
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Strategy for Future Research Activity |
「文化政策と芸術価値基準(Artistic Choice)の関係性」(仮題)検閲事件以降のNEAと現在の芸術助成金の実態を検証する。公的基金に関しては、その活動・使命・選抜基準などを、アーティストに関しては、基金と作品との関わり・影響関係を中心にできればインタヴューを申し入れる。公的基金・助成金に関しては、国家芸術基金(NEA)、ニューヨーク州芸術カウンシル、マッカーサー基金などを具体的に検証したいと考えており、アーティストに関しては、NEAに基金交付を取り消されたカレン・フィンレーら、主にセクシュアリティーの問題を扱うパフォーマンスアーティストらの活動、マッカーサー受賞者リー・ブルーアー、またたとえばロバート・ウィルソンら基金獲得のポリティクスにたけているといわれるアーティストらの活動内容と思想および意識の関わりを辿り、双方のポリティクスの関係性を検討する。
また、平成27年度には、研究の最終年を意識し、学術的な諸言説・理論を導入して、総括的な問題の把握・指標の確立を目指す。それぞれの年度において、言語化の作業を行い、学会での口頭発表を準備などを経て、所属機関の紀要に論文として発表する。
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Causes of Carryover |
調査研究出張の計画を変更しやや短めの研究出張としたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
成果をまとめるために資料整理補助を拡充し、海外調査研究出張を年度の前半に十全に行うことで助成金を使用する予定である。
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