2012 Fiscal Year Research-status Report
小説から映画へ―「アダプテーションの詩学」構築に向けて
Project/Area Number |
24520280
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
佐々木 徹 京都大学, 文学研究科, 教授 (30170682)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 英文学 / 映画 / アダプテーション / ディケンズ |
Research Abstract |
本研究の目的は小説から映画へのアダプテーションの研究であり、24年度の研究実施計画は小説と映画の比較研究の基礎作りを行うことと、前回科研費研究から今回の研究のリンクとなる「アダプターとしてのディケンズ」についての研究成果を世に問うことであった。以下、24年度の実績を助成金の使用内訳に即して述べる。 備品費で購入した映像資料を活用し、文学作品の映画へのアダプテーションの広範な実例に接することができた。文献調査の点では、Colin MacCabec著True to the Spirit、Simone Murray著The Adaptation Industry、 Mary Snyder著Analysing Literature-to-Film Adaptationsなどの研究書には特に啓発されるところが多く、今後の研究方針に関して貴重な示唆を得た。 旅費を利用した外国出張においては、ロンドンのBritish Film Instituteにおもむき、映像関係資料の調査を行うとともに、連合王国ポーツマスにて開催された国際学会で(「アダプターとしてのディケンズ」という観点につながる)講演を行った。聴衆の中にいた研究者の幾人かから貴重なコメントを得ることができたし、新たな研究上のコンタクトも確立することができた。 謝金を用いて、来日中のカリフォルニア大学ロサンジェルス校キャサリン・ギャラガー教授と長時間面談し、ディケンズに関する教授の著書について詳細な説明を聴き、アダプテーション研究に関して貴重な助言を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
映像資料、アダプテーション関係文献の収集・整理は順調に進み、それらの内容の吟味も然るべく進行している。また、当初の主要課題であった国際的な研究発信についても、国際学会での講演という形でそれを達成した。したがって、本研究は着々と進捗していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
研究を進めていくにつれて、包括的なアダプテーションの詩学を構築するという作業にあたっては、単にアダプテーション作品のみを研究するのでは不十分であるとの認識が強まった。たとえば、True Grit (1969)という映画はCharles Portisの原作(1968)に基づいているが、それは西部劇というジャンルの作品であり、この作品がなぜ、どのようにアダプトされたかはそのジャンルの他の作品、さらには1960年代末という時期に製作された他の映画、さらにはジョン・ウェインという主演俳優の一連の作品等々に関わる問題でもある。今後はこのような広い視野から映像作品を検討していく必要がある。 昨年の講演原稿を英語で国際誌に投稿し、さらなる国際的発信につとめる。 この研究発表はディケンズの伝記的研究に関わる部分があったが、最近の「リンカーン」や「サッチャー」の例にもあるように、アダプテーションとしての伝記映画は興味深いテーマになりそうに思われるので、これもリサーチの一つの軸としたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
主として備品に使用する。映像資料、映画関係の図書に加えて、伝記関係資料の図書の購入が大部分を占める予定。必要が生じれば、研究資料の整理作業のために若干のアルバイト謝金も計上される。
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Research Products
(4 results)