2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24520282
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
森岡 裕一 大阪大学, 文学研究科, 教授 (20135635)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | アメリカ合衆国 / 禁酒小説 / 家庭小説 / 感傷主義 |
Research Abstract |
夏期の海外出張においては、ニューヨーク公立図書館を中心に資料調査を行い、アメリカ禁酒小説の貴重図書のコピーをするなど資料収集で大きな成果を得ることができた。同時に、今回収集した資料も含めこれまで集めてきた資料の分析も進めている。とくに、アルコール依存の夫がいる家庭における離婚のテーマが、禁酒小説にどう反映しているか、また、その際、男性と女性の禁酒小説作家によってどのように取り扱われ方が違うかについての研究を継続中である。19世紀のアメリカでは、女性参政権運動家によって女性の離婚権の問題が議論され始めているが、禁酒小説における離婚のモチーフは扱いが微妙である。離婚をテーマとした作品を多く書いたT.S.アーサーなども禁酒小説においてはその問題を回避しているきらいがある。ストウ、メアリ・チェリスら女性禁酒小説家の作品においても間接的な表現に終始しており、当時のジェンダー・ギャップ、ジェンダー・バイアスが影響しているものと思われる。 春にはカリフォルニアに出張し、大学図書館等所蔵の文献調査を行うと同時に、ナパバレーに赴き、カリフォルニアのワイン栽培の歴史、実態に関する実地調査を行った。アメリカにおけるワイン作りはまだ歴史が新しいが、すでに世界的なブランドとして重要産業となており、またアメリカにおける飲酒文化に占めるワインの位置はけっして小さくはない。それに関連する文献を収集できたことも、今後の研究の進展に助けとなるものと思われる。 現在執筆中のアメリカ文化に関する単著はラフな原稿はすでに仕上がっているが、その一章はアメリカの飲酒文化に関するもので、今年度の研究成果が生かされている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究対象の禁酒小説はテクスト入手が困難で、現地の図書館等で直接資料にあたるしかない。資料はコピーをとるか、コピー不可の文献は筆写するしかなく、たびたびの出張が必要となる。その意味で、海外出張の機会に時間をさき資料収集に当たってこれたことは研究のための基礎資料を得るうえで重要で、相当数の文献が収集できたことは大きな達成といえる。資料の分析も進んでおり、その成果はこれまで口頭発表、論文の形で発表してきた。今年度の成果も近く論文で発表する予定であり、また研究成果にもとづく一般書の執筆など波及効果も大きい。
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Strategy for Future Research Activity |
禁酒小説研究に関しては量的なアプローチが重要となり、対象資料は多ければ多いほど研究の精度は高くなる。したがって、これまで同様、現地での資料収集を継続しなければならない。収集した資料の分析を進めるのも同様である。その際、今年度は「男らしさ(manliness)」のモチーフを抽出することに重点をおいて分析を行う予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
上記理由により、研究費のうち海外出張費の占める割合が高くなる。図書費については、テクスト収集にかかる費用がほとんどであるが、それはコピー代が主であるため、実際は私費にてまかなっている。パソコンなどの備品はそろっているので、あとは文房具などの物品費が少し必要な程度だと思われる。資料整備の際の助けにアルバイトをやとうことになれば謝金が発生することも予想されるが、それは次年度に集中的に行うことになる可能性が高い。
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