2013 Fiscal Year Research-status Report
〈スキャンダラス・メモアリスト〉女性作家と異国トポス
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24520283
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
服部 典之 大阪大学, 文学研究科, 教授 (50172937)
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Keywords | スキャンダラス・メモアリスト / 自伝文学 / 18世紀英国小説 / 女性作家 |
Research Abstract |
本年度はスキャンダラス・メモアリストの中でも最も重要な女流作家であるテレジア・コンスタンシア・フィリップス女史の長大な自伝の研究を深めた。様々な国に流布してたことが海外出張で調査することで判明した、この自伝を子細に分析し、その結果を共編著『<アンチ>エイジングと英米文学』として平成25年4月に出版することができた。その中の論文「T.C.フィリップス女史の数奇な人生ーーレイプされる少女から蕩尽する妖婦へーー」は本研究課題にとって、根幹となる論文となった。 それ以外にも、研究課題に関する書物を二冊共編著として出版できた。岩波書店から刊行した『『ガリヴァー旅行記』徹底注釈』(平成25年8月刊)は前の科研「「南太平洋」という物語言説の変容と変奏」(2009年~2011年)から継続した研究内容の集大成であり、東京女子大学の原田範行氏と東京大学の武田将明氏との共著であるが、すべての内容に目を通してお互いに補筆加筆しながら作り上げたものである。『移動する英米文学』は英宝社から平成25年12月に刊行した共編著であり、論文「アビシニアン・ジョンソン」は本研究課題の成果の一つである。 また平成26年2月にフランス・パリに海外出張し、<スキャンダラス・メモアリスト〉女性作家の一人であり、フランスで生活をしたグーチ夫人の一次資料を収集し、調査した。また、主な対象作家であるフィリップス婦人のフランスでの受容について、フランスの最大の図書館であるフランス国立図書館で調査した。このような調査は英文学の分野では行われたことがなく、オリジナルで充実した成果を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度は、3冊の研究課題に関する書物を出版することができた点で、大きな進展があった。また当該年度までにアメリカ、イタリア、フランスへの海外出張を行うことで、イギリスのスキャンダルたちが18世紀において世界的に大きな影響を持っていた点を子細に調査ができた。その点で研究課題の中の「異国トポス」の意味は明らかにすることができた。ただ、肝心のイギリスの大英博物館での本国での受容と反応という点が未調査である。その意味で、おおむね順調であるという評価ができる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は、イギリスの大英図書館で、スキャンダラス・メモアリストの一次文献を徹底的に調査し、締めくくりの研究を行いたい。また、ヨーロッパ周辺国での未調査国の国立図書館に赴いて、世界的な規模の重要性についての結論をまとめる予定である。論文としては、スキャンダラス・メモアリストの最重要作家のT.C.フィリップス女史がリチャードソン作『パミラ』やシャーロット・ブロンテ作『ジェイン・エア』などの古典作品との相互影響関係を持つことを明らかにし、従来は指摘されなかったことだが、英文学史において重要な役割を果たしていることを実証する論文を執筆予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当該年度は、校務として教育支援室副室長等重責のある職務に就いていたことと、文部科学省での重要な委員会の主査を務めていたことから極めて多忙で、夏に予定していたイギリス大英図書館への出張を取りやめざるを得なかった。そのため、予定していたより使用額が減り、次年度使用額が生じることとなった。 昨年度実現できなかった大英図書館への出張が、今年度1学期にサバティカルを獲得したために可能となった。ポルトガル・リスボンにあるポルトガル国立図書館(BNP)でも調査を予定している。資料・情報収集・資料閲覧作業がこれでほぼ終了するので、残りの期間を使って資料分析、論文執筆に当たりたい。
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