2015 Fiscal Year Research-status Report
20-21世紀アメリカ演劇の政治学研究―1900年からポスト9.11
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24520284
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
貴志 雅之 大阪大学, 言語文化研究科(研究院), 教授 (30195226)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | アメリカ演劇 / 政治学 / The Goat, / 幸福の追求 / 支配 / 歴史 / 他者 / ポーのパフォーマンス |
Outline of Annual Research Achievements |
平成 27 年度研究実績は大きく以下の4つに分類される。 (1) Edward Albee のThe Goat, or Who Is Sylvia?(2002)における「幸福の追求と破壊」に関する研究:本作品を対象に21世紀アメリカにおける個人の幸福の追求と支配的イデオロギーとの衝突を巡る政治性と演劇表象の在り方を考察。その成果を「タブーを犯した成功者――The Goat, or Who Is Sylvia? における幸福の追求と破壊」と題して、日本アメリカ文学会第54回全国大会シンポジウム「アメリカ文学における幸福の追求とその行方」(2015年10月11日,京都大学)で発表。(2) 2014年の日本ポー学会第7回年次大会シンポジウム「ポーとアメリカン・シアター」での発表内容をさらに展開し、論考「黙殺される劇作と劇評 ― アメリカ演劇におけるポーのパフォーマンスとその評価」を『ポー研究』第7号(日本ポー学会,2015年3月)で発表(同号の実際の刊行は2015年9月であることから本年度研究実績として記載)。 (3) 平成26年度 中・四国アメリカ文学会冬季大会シンポジウム「アメリカン文学における幸せの追求」での発表内容をさらに展開し、「子供の死とパラレル・ユニバース―デヴィッド・リンゼイ=アベアーの『ラビット・ホール』をめぐって」と題する論考を大阪大学『英米研究』第40号(大阪大学英米学会,2016年3月)で発表。(4)上記科研の本年度研究計画に即して、20世紀転換期からポスト9.11の現代に至るアメリカ演劇の政治学の通時的流れと志向性を総括した20-21世紀アメリカ演劇の政治学研究の成果を、第4回関西大学英米文学英語学会年次大会(2015年10月17日,関西大学)で「アメリカ演劇の政治学―支配、歴史、他者」と題する講演で発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画では、平成27年度は過去3 年間の研究結果を再検討し、本研究を総括する20-21 世紀アメリカ演劇政治学研究を発表・刊行(準備)する計画だった。しかし、当初計画が順調かつ効率的に進み、直接経費も節約できたことにより、研究目的をより精緻かつ発展的に達成するために補助事業期間の1年延長を申請し、承認された。 本研究の総括の一環である21 世紀アメリカ演劇政治学に関する予見的研究として、平成 27 年度研究実績で記載した (1)Edward Albee のThe Goat, or Who Is Sylvia?(2002)における「幸福の追求と破壊」に関する研究と(3)『ラビット・ホール』研究が挙げられる。(1)では、社会的成功者が犯した禁忌行為(獣姦)に起因する「悲劇」を描くThe Goatについて、21世紀アメリカにおける個人の幸福の追求とそれを阻む支配的イデオロギーの暴力を巡る政治性と演劇表象の在り方を考察し、オールビーが提起した現代の「悲劇」と「寛容性の限界」を検討した。(3)は子供の死に苦しむ夫婦という現代アメリカの問題を描く本作が先端的理論に基づくSFナラティヴに救いの可能性を示唆する作品展開とその意義を検討した。また、(2)のエドガー・アラン・ポーの演劇政治学研究は、「20-21世紀アメリカ演劇研究の政治学」に至る19世紀演劇政治学を再評価する点で本研究課題の総括に資するものであり、(4)の講演「アメリカ演劇の政治学―支配、歴史、他者」は、20世紀転換期からポスト9.11の現代に至るアメリカ演劇の政治学の通時的流れと志向性を検証・再考した本研究課題「20-21世紀アメリカ演劇の政治学研究」の現段階での総括的研究である。 以上から、全体として研究はおおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の延長期間となる平成28年度は、平成27年度時点で行った本研究課題4年間の総括的研究をさらに発展的に展開する。アメリカの支配的政治イデオロギー・言説・政策を脱構築する現代アメリカ演劇の政治学をより精緻かつ体系的に定位する「20-21世紀アメリカ演劇の政治学研究」の研究成果を発表するとともに、その最終的研究成果をまとめ上げ、刊行もしくは刊行準備を図ることを目標とする。
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Causes of Carryover |
当初計画が順調かつ効率的に進み、直接経費も節約できたことにより、研究目的をより精緻かつ発展的に達成するために補助事業期間の1年延長を申請し、承認されたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本研究課題の研究目的をより精緻かつ発展的に達成するために、主たる物品費は「20-21世紀アメリカ演劇の政治学研究」執筆・刊行(準備)に向けた追加的文献資料・映像資料の入手に充当するとともに、旅費は主に国内での学会発表、情報交換、資料収集およびアメリカでの補足的研究調査・資料収集に充当する予定である。
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Remarks |
大阪大学研究者総覧 研究者詳細 貴志 雅之 http://www.dma.jim.osaka-u.ac.jp/view?l=ja&u=1812
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Research Products
(4 results)