2013 Fiscal Year Research-status Report
日本的『ハムレット』翻案作品の研究―<書き換え>メカニズムの解明―
Project/Area Number |
24520286
|
Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
芦津 かおり 神戸大学, その他の研究科, 准教授 (30340425)
|
Keywords | Hamlet / Shakespeare / rewriting / adaptation / Takarazuka / Jyuran Hisao |
Research Abstract |
日本で生まれた『ハムレット』翻案作品に焦点を合わせて、その翻案成立時に作用する「書き換え」のメカニズムを、体系的・歴史的に解明することを本研究はめざす。 本年度は、戦後まもない1949年に宝塚歌劇団で上演された『ハムレット』に焦点を合わせて「書き換え」のメカニズムを解明した。同上演は、原作戯曲に大幅な加筆修正を加えることにより、シェイクスピア悲劇の本質をずいぶんと変容させるものである。宝塚歌劇団という劇団の特殊性や、1949年という上演時期にも目配りしながら、<宝塚化>の過程を明らかにするとともに、本公演の意義を明らかにした。具体的には、宝塚歌劇団が(1)フレーミング、(2)単純化とダミング・ダウン、(3)女性表象の書き換えと性的表現の清浄化という三つのプロセスを通じて、「厳しく」「汚れた」現実から「女こども」を中心とする観客を庇護し、彼らの劇体験をコントロールしようとしている点を明らかにした。さらに、宝塚歌劇団が「大衆的」「低俗」「少女趣味」といった自己イメージを払しょくするべくシェイクスピアや『ハムレット』がまとう文化的権威や名声、古典性、エリート性を利用しようとしたことにも論究した。 また、大衆作家・久生十蘭の『ハムレット』翻案作品に関して国際誌に投稿していた論文の書き換え作業をも行った。とりわけ、久生作品と『ハムレット』との関連性、および戦後の天皇の戦争責任に関する部分の記述を手直している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
個別の翻案研究についてはほぼ予定通りに進んでいるが、久生十蘭の翻案に関する英語論文の出版が思うようにいかなかったため、成果発表の点ですこし遅れてしまっている。2014年度内の出版を目指したい。
|
Strategy for Future Research Activity |
おおむね、申請時の予定どおりに進めるつもりであるが、当初予定していた研究に加え、夏目漱石のシェイクスピア受容に関する研究をして、本研究の総論的なものにしたいと考えている。また2013年度にうまく成果が上がらなかった海外における『ハムレット』翻案に関する研究を、海外出張期間をうまく使って進めたい。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
関連の書籍や資料入手に、科研費をうまく使用できなかったこと(海外購入分、資料館のコピー代)、適当な学会(研究テーマに適った)での発表ができなかったこと、ノートブックPCの購入を控えたことなどが主たる理由である。 研究テーマに関連する図書資料の購入とコピー、ノートブックPCの購入、海外出張や学会発表の旅費、英語論文の校正謝金などを中心に使用する。
|
Research Products
(1 results)