2014 Fiscal Year Annual Research Report
18ー19世紀の英語語彙と文体:理性・道徳・感情に関する概念の表現
Project/Area Number |
24520292
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
松谷 緑 山口大学, 教育学部, 教授 (70259737)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 近代英語 / 語彙研究 / 英国小説 / オースティン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は18世紀から19世紀の後期近代英語について、理性・道徳・感情に関する語彙を取り上げ、当時の社会的背景を踏まえ、その意味を明らかにするものである。最終年度の主たる成果は以下の通りである。 日本オースティン協会において、「Emmaにおける理性・道徳・感情に関する概念の表現」と題し発表した。作品が著された当時の英語の語彙体系における単語の意味変化をたどり、価値の重層性を描き出すのに抽象語が効果的に機能することを指摘した。時代を背景として、意味の幅を持つmindの多様なコロケーションや、評価的意味が揺れその解釈に幅を持つcondescensionといった語が効果的に用いられ、小説の登場人物の人物像の形成やアイロニーの構築に貢献していることを明らかにした。 オックスフォードのボドレアンを始めとする各種図書館で、18世紀以降の各種辞書、後期近代英語期の散文文学作品の各エディション、書簡、その他の関連資料を閲覧し、また、バースでは当該分野の造詣の深い複数のネイティブスピーカーから貴重な示唆をうけ、大きな成果を得た。 「英単語niceの意味を探る:Nice-it does for every thing」と題した論文においては、niceの意味変化の過程を考察した。そこには、ある概念のある一面から別の一面へ、すなわち、一つのことが好ましくも疎ましくも解釈される、認知的な意味の変化があり、特に、口語場面で用いられるniceのような評価的意味を表す語は、その内容的意味が時代とともにますます曖昧になり、使用者の主観を反映し、文脈に依存する傾向を強めることを明らかにした。また、一人の作家においても、書簡と小説とでその語の用いられ方に異なる点が観察されることを指摘し、意味変化の過渡期にある語について、文献学的成果による辞書的参照に加え、テキストタイプや個々の使用場面の文脈における解釈が重要であることを説いた。
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Research Products
(3 results)