2013 Fiscal Year Research-status Report
アメリカのマイノリティ文学における境域の意義と文学ジャンルの形成
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24520296
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
喜納 育江 琉球大学, 国際沖縄研究所, 教授 (20284945)
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Keywords | 境域 / アメリカ文学 / マイノリティ |
Research Abstract |
昨年までの研究で、「境域」が、多様な文化的、地政治学的状況の中で普遍的に存在する概念であり、複数の文化的状況を生きるマイノリティの人々の文学を「グローバルなコンテクストに開かれたマイノリティ文学」へと深化させるうえで、汎用的な批評概念となりうるという点については理解したが、本年度は、その「境域」という概念そのものが含意する多様性のありようを、主に地政治学的観点から考察した。当初の研究計画からはやや逸れる形にはなったが、今年はアメリカ文学の射程からはしばしば遺漏する「境域」としてのハワイ州の存在に着目した。8月にはハワイ大学を訪ね、社会学者のジョイス・チネン教授や、ハワイ先住民文化学部のノエノエ・シルヴァ教授およびホクラニ・アイカウ准教授に、ハワイにおける移民の歴史や先住民の言語文化に関する聞き取りを行った。沖縄系アメリカ人のハワイ大学沖縄研究センター長でもあるチネン教授からは、ハワイへの沖縄系移民の歴史と、ハワイ社会におけるその現在の状況、そしてアメリカ社会におけるハワイの位置づけ、さらにはアメリカ社会における沖縄系移民の立場についての話を伺うことができた。また、シルヴァ教授とアイカウ准教授からは、北米のアメリカ先住民の文化的闘争にも匹敵するハワイ先住民の未だに続くコロニアルな状況、そしてその脱植民地運動に関する話や、ハワイ語による文芸の動向に関する情報を共有していただいた。こうした調査の結果、太平洋島嶼地域に存在するハワイは、地理的にも、その多文化共存的な地域社会の様態を見ても、アメリカ南西部とはまた異なった意味で、アメリカの「境域」であるとみなすことができると確信するに至った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的にも掲げた「アメリカの移民やディアスポラの文学に関する調査」や、「境域文化を理論化する」作業をおおむね順調に進めることができたと判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は本研究の最終年度となるが、「境域文学」を移民、ディアスポラ、ジェンダーの視点から定義していく作業を進め、それに関する研究論文を執筆することで、本研究の総括としたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度はすでに入手している資料の講読と、資料情報の収集そのものに時間と予算を費やしたこともあり、本来臨時雇い上げ等をして資料の整理をするための時間を確保することができなかった。 次年度は、本年度で出遅れた資料の整理やデータベース作成等のため、次年度で本来予定している臨時雇い上げの予算以上の予算を使用することが想定される。
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Research Products
(3 results)