2014 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
24520306
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
辺見 葉子 慶應義塾大学, 文学部, 教授 (40245428)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | トールキン / 指輪物語 / ケルト観 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、従前のトールキン研究の視点から抜け落ちていた「ケルティスト」としてのトールキンに焦点を当て、未刊の草稿原稿の調査を通して彼の「ケルト観」を解明することを目的としたものである。 米国マーケット大学図書館および英国オックスフォード大学ボードリアン図書館おける調査が、研究助成によって可能となった。コピーやスキャン、カメラでの撮影などが一切許されない中、ひたすらトランスクリプトの作成をする調査は、トールキンの自筆原稿の読みずらさも相まって、極めて時間のかかるものであったが。しかし地道に積み上げた調査結果をもとに、トールキンのケルト語(=ウェールズ語・ブリトン語)観、および「ケルティシスト」としてのトールキンの姿をある程度まで浮かび上がらせることが出来た。 その結果Tolkien Symposiumのメンバーに加えられるという名誉を得、調査結果を踏まえた発表は高い評価を受け、出版を奨励された。出版するには版権を所有するTolkien Estateからの許可が必要であるが、Tolkien Symposiumのメンバーが推薦状を書き、許可申請が異例の速さですすみ、文献利用許可が下りた。トールキン研究者にとって最大の難関であるTolkien Estateの許可は、これは今後の研究を進めていく中で、最大の収穫であり成果であった。 また、ボードリアン図書館所蔵のEnglish and Welshの草稿調査においては、ジョン・ガースという、これ以上望み得ない最高の研究者の助力を得ることが出来、極めて判読困難な手稿テキストのトランスクリプトの作成が飛躍的にはかどった。エディションの出版にこぎ着けるにはまだ十分とは言えないものの、トールキンのブリトン語観の解明に必須と思われる箇所の解読は出来た。また何よりも、草稿過程でのメモの確認が出来たことによって、仮説をサポートする根拠の発見もあった。
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Research Products
(1 results)