2013 Fiscal Year Research-status Report
アンジェラ・カーターの作品におけるジェンダー・パフォーマティビティの研究
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24520307
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Research Institution | International Christian University |
Principal Investigator |
生駒 夏美 国際基督教大学, 教養学部, 上級准教授 (60365525)
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Keywords | 文学 / ジェンダー / パフォーマティビティ / クィア / 演劇 / フェミニズム批評 / 間テクスト性 |
Research Abstract |
平成25年度はカーター関連文献の収集を行ない、またカーターの小説世界におけるパフォーマティビティ、特にジェンダー・パフォーマティビティに関する発表を二件行なった。カーターの小説にモチーフとして頻出する演劇の小道具は、ジェンダー(とくに女性性)の演技性を露出させる文字通りの舞台装置となっており、これを作品中に巧みに織り込む事によって、カーターは女性性が演技的に構築されるものであることを明らかにしている。日本比較文学会大会における発表では、カーターがその作品中に、プルーストや谷崎といった文学界の大御所的な男性作家の作品との間テクスト性を用いることによって、彼らの作品を模倣しながらも彼らのよってたつ女性観の攪乱につなげていることを指摘した。これは、まさに演技という意味でのパフォーマンスをカーター自身が行なっていることに他ならず、カーターがモチーフのみならず、その語りによっても、ジェンダー・パフォーマティビティを実践し、さらにそれを攪乱につなげていることが明らかになった。神奈川大学での講演会においては、カーターの日本滞在期間の体験が、カーター自身の「女性観」を異化させることにつながった過程を明らかにし、以後の作品にその感覚が活かされている様子を発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
文献の収集、特にカーターの戯曲作品と批評の収集が順調に進んでおり、またそれらを用いた発表原稿も二本執筆している。これらの原稿については、出版に向けて体裁を今後整えて行く予定である。また海外での発表に向けて、英語論文の執筆も進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は9月にイギリスでカーター作品における日本の影響について、間テクスト性や模倣的パフォーマンスを含めた内容の発表を行なう。また、後半はカーターの作品の中でもあまり知られていない戯曲や脚本類を詳細に見ることをしていく予定であり、そのための文献も随時そろえて行く予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度の予算のうち、6万円弱を次年度使用としたが、これは平成26年度に学会参加のために海外(イギリス)渡航を計画しているため、その予算の一部として使用するためである。 平成26年度の予算のうち、前年度未使用額を含めて40万円をイギリスでの学会参加の費用とし、6万円は翻訳補助者への謝金として使用する。残額97,225円は研究書の購入費として使用する予定である。
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