2012 Fiscal Year Research-status Report
公的言説から文学テクストへ――アメリカ南部文学の自伝的作品と近代日本の私小説
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24520316
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Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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| Research Institution | Rikkyo University |
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Principal Investigator |
後藤 和彦 立教大学, 文学部, 教授 (10205594)
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| Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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| Keywords | 自伝的テクスト アメリカ合衆国 / 私小説 |
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| Research Abstract |
研究課題「公的言説から文学テクストへ-アメリカ南部文学の自伝的作品と近代日本の私小説」に従い、アメリカ南部の自伝的文学作品と日本近代文学における「私小説」作品について、その類似および相似などに特段の注意を払いつつ比較検討作業を行った。具体的には、アメリカ南部文学にあっては、必ずしも自伝的作家とは目されていないウィリアム・フォークナーあるいはマーク・トウェインの文学作品に着目し、自伝的要素の発露を精査、その上で歴然たる自伝的告白というスタイルを取らず「発露」あるいは「脚色」という様態をとること自体を南部文学における自伝的スタイルのもうひとつの特徴としてとらえることの可能性を見出した一方、日本近代文学においては、いわゆる「私小説」言説が確立する前史に関する新しい研究の存在を発見、これを念頭においてより総合的な「私小説」研究の一助とすべく検討しつつ、一方で「私小説」の始祖とも呼ぶべき田山花袋の『蒲団』にわずかに先んじた島崎藤村の『破戒』のもつ、必ずしも歴然たる「私小説」の形式をとらぬ自伝的作品について論考を作成した。くわえて同論考においては、近代小説における「私語り」の歴史的意義などを上にあげた「私小説」前史に関する実証的研究を考慮にいれつつ考察し、文学的テクストが「私」を主題化する際に働いた文学者の心理情況についての考察をも行った。なお同論考は今年度末に活字化される予定である。
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| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度は課題研究に即し、アメリカ南部文学に関するものと近代日本文学に関するものそれぞれ論文１本ずつ、計２本を完成し、１本は活字となって今月中に刊行予定であり、もう１本も今年度末あるいは来年度早々には刊行予定となっている。また学会業務のために昨夏期のアメリカ出張はかなわなかったが、今年早々にボストンで行われたModern Language Association大会に参加し、関心の対象を共有する研究者とも交流を行い、来期以降の共同研究についてあらかじめの打ち合わせも行った。
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| Strategy for Future Research Activity |
今年度についても引き続き、アメリカ南部および近代日本文学における「私語り」言説の種々の様態について分析を進める。研究および議論の枠組みとなる理論的な部分にも先行研究を発掘しつつ引き続き考察を深めてゆくとともに、これまで取り上げてこなかった作家の作品などにも積極的に考察の対象を広げてゆく予定である。具体的には、アメリカ南部文学にあっては、前年度に引き続いてマーク・トウェインをとりあげるとともに、あらたに日本ではあまり研究されていない現代女性作家リー・スミスを考察対象とし、近代日本文学にあっては、昨年に引き続き特に島崎藤村を継続検討の対象とするほか、必ずしも自伝的性格を有するとは言えない作家、たとえば三島由紀夫などの自伝的傾向についても考察の予定である。
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| Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
昨年度は学会業務（英文学会事務局長として勤務）繁忙につき、海外への研究滞在期間が思うようにとれなかったため、今年度は夏期、冬期、春期と大学業務との兼ね合いをはかりつつ可能な限りアメリカ合衆国を中心として、同種の研究を行う海外の専門家とも交流をはかり、資料蒐集にも意を用いる所存である。その際、アメリカ内外のアメリカ南部研究者ばかりでなく、日本内外の日本近代文学研究者にも積極的な交流を図りたいと考えている。
また主張先への携帯用に適したノート型パソコンを購入することも検討したい。
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Research Products
(3 results)
