2013 Fiscal Year Research-status Report
ポストモダニズム以降の文化研究―文化翻訳の実践とベトナム系アメリカ文化
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24520317
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
麻生 享志 早稲田大学, 国際教養学術院, 教授 (80286434)
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Keywords | ポストモダニズム / 文化翻訳 / ヴェトナム系移民 / アメリカ文化・文学 / 環太平洋文化・文学 / ヨーロッパ圏文化・社会 |
Research Abstract |
平成25年度は、ポストモダニズム理論でいう「記憶の再構築」が、ヴェトナム系移民文化を中心に現代文化の組成、あるいは蘇生にどのような影響を与えているのかを調査・研究した。その一部については、平成26年3月名古屋大学言語文化研究所主催国際シンポジウム "American Literature/Culture in a Global Context" において、研究発表 “Communal, Transcommunal, Transpacific: Mapping Out Asian American Culture in the Early 21st Century” で公表した。 また、ヴェトナム系移民の文化・社会活動に関する現地調査・研究をフランス・イギリスにて実施した。Le Musee d’Art Moderne における Danh Vo の個展 “Go Mo Ni Da Ma” をはじめとするヴェトナム系ヨーロッパ移民芸術家の活動調査・研究、大英図書館所蔵のヴェトナム系ヨーロッパ移民に関する資料研究がその内容である。 一方、過年度からの研究結果の一部をこれまでの成果として出版・公表した。共編著『憑依する過去』(金星堂、2014年)では、論文「トラウマを越えて―GB・トラン『ヴェトナメリカ』における歴史の再構築とトランスコミュナリティ』(333-46頁)を著した。また、“Gender and Race in Vietnamese American Culture: Queer Passivity in the Work of Pipo Nguyen-Duy” を早稲田大学大学院国際コミュニケーション研究科紀要『Transcommunication』にて公表した(No. 1 (2014): pp. 105-11) 。双方とも、昨年度学会にて発表した研究に基づくものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度においては、和英論文各一本を研究成果の一部として公表した。また、前年度同様、国際シンポジウムでの研究発表(使用言語:英)を行った。その結果、本研究を開始するにあたり立てた予定とほぼ合致するか、それよりもやや早いペースで、現在研究が進行している。前年度に行った研究発表を土台に論文発表に努めてきたことが、確実に成果を生み出す好循環につながっている。 新たな取り組みとしては、ヴェトナム系移民文化・文学の位置づけをより明確化するために、環太平洋文化・文学という枠組みを導入し、そのなかでヴェトナム系の試みを再解釈するように心がけている点がある。具体的には、日系移民文化・文学や中国系文化・文学との比較を通じて、ヴェトナム系ならではの特徴を浮かびあがらせると同時に、環太平洋地域という地政学的空間がもつ特色が文化・文学の形成に及ぼす影響や特質に焦点を当てた研究を実践してきた。トランスナショナルな文化形成が日常化し、新たな文化構築の前提条件となった現代であるからこそ、地政学的特徴に着目していくことは、現在の文化研究に欠かせない視点である。 一方、ヨーロッパでの現地調査では、北米地域に比べてヴェトナム系移民の絶対数が少ないことから思ったようには研究が進展しなかった面もあった。ただ、この点については、現地調査を実施する以前からある程度想定されていたことであり、むしろヨーロッパという成熟した市民社会において、移民文化がどのように評価され、共有・保存されているのかという点を確認出来たのは意義深い。トランスナショナリズム同様に今や日常化したポストモダニズム的な文化空間を、移民文化、あるいは異文化が巧みに利用し、積極的な評価を得ている点は重要である。文化が持つ創造的側面と共有・保存という公共的視点を併せて調査・研究を行う意義を改めて認識した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は、アメリカを中心とする北米地域におけるヴェトナム系文化・文学の展開と、ヴェトナム系ヨーロッパ移民が創り出してきた文化・共同体の比較を意図して研究を実施した。同時に、環太平洋地域におけるヴェトナム系以外のアジア系移民が生み出す文化・共同体にも焦点をあて、多角的な視点からヴェトナム系移民文化の展開を捉えるよう努めてきた。その結果、ヴェトナム系アメリカ移民特有の文化風土をより明確にする土台を築くことができた。一方で、ややテーマを広げすぎたことも事実で、平成26年度については、研究最終年度ということもあり、再度アメリカ系ヴェトナム移民文化・文学を中心にすえ、調査・研究を行うこととする。 但し、昨年度に導入した環太平洋文化・文学という視点は、ヴェトナム系のみならず、近年におけるポストモダニズム文化・文学の展開を理解する上でも重要なものである。その枠組みを積極的に利用しつつ、独自の文化・文学を展開するヴェトナム系文化人・芸術家も少なくない。環太平洋文化の一部としてヴェトナム系文化を位置づけること、汎アジア的な動きとしてヴェトナム系の文化・芸術活動を捉えること、これら2点に重きを置いた研究を展開したい。 その意味では、カリフォルニア大学アーヴァイン校図書館所蔵の "South Asian Library" は貴重な資料である。ヴェトナム系移民がカリフォルニアで培ってきた文化や社会遺産を多く含むこの資料は、丹念に調査・分析すべきものである。また、カリフォルニア州オレンジ・カウンティーに展開されるヴェトナム系共同体の現在についても、再度現地にて調査・研究を行っていきたい。 研究成果の発表・公表については、アジア系アメリカ文学研究会や日本アメリカ文学会を通じて公表した上で、早期に論文にまとめる方向で準備を進めている。同時に、これまで同様、国際シンポジウムでの発表も心がけたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度については、「外国旅費」支出において、当初計画よりも交通費・滞在費とも抑えることができた。また、予定していた「国内旅費」については、日程上参加することができず、その分経費が浮いた。加えて、「その他」支出について、他研究費を獲得した結果、当初計画よりも大幅に抑制することとなった。以上のことから、次年度への繰り越し分が生じた。 昨年度からの繰り越し分については、アメリカでの資料収集や国内学会出張経費に補充していきたい。また、平成24年度に購入したPC等機器について、必要に応じたアップデートを行うための費用にも充当したい。それ以外については、当初計画の通りに研究を実施する予定である。
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Research Products
(3 results)