2012 Fiscal Year Research-status Report
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24520319
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
坂内 太 早稲田大学, 文学学術院, 准教授 (60453990)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 身体表象 / アイルランド文学 / 都市伝説 / 北アイルランド |
Research Abstract |
本研究は、アイルランドのモダニズム文学(特にW・B・イェイツ、ジェイムズ・ジョイス、サミュエル・ベケット)の小説、戯曲、詩、詩劇における人間身体の表象を、メディアやテクノロジーの表象や、それらの影響との関連の中で精査することにより、身体表象論的分析を展開することを主な目的としている。この内、研究の初年度である本年度は、小説家ジェイムズ・ジョイスの主要作品に見られる変容・変身のモチーフや断片的身体の表象の研究、及びサミュエル・ベケットの後期作品における身体表象の研究に重点を置いた。 上記の研究の内、前者については、20世紀初頭のアイルランド演劇・詩劇に見られる変容のモチーフと比較することにより、これまで小説・叙事詩との比較研究が多かった先行研究とは異なるジャンル横断的な研究の視点を得た。後者においては、劇作家サミュエル・ベケットの後期演劇における断片的な身体表象を、同時代の詩人による作品のモチーフと比較することで、同様に前例の無いジャンル横断的な研究の視点を得た。 特にベケット後期作品と他の詩人の作品との比較研究においては、同時代のアイルランド/北アイルランドに流布していた口承神話の身体表象と、これに関連した新聞メディアにおける広告・写真とを比較検討することにより、人間身体の文化的周縁化を生み出すメディア・地域共同体の偏向や規制力に抗する劇作家・詩人の身体表象の具体的側面を考察した。その結果、「新聞メディア・写真による記録」が人間身体の表象に関する虚構化を推し進める一方で、本研究で取り上げる劇作家・詩人による美的虚構が人間身体の神話化に抵抗するという逆説的側面があることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初に設定した研究の目的に関しては、それに相応する研究結果を得て公表した。本研究の最終年度に取り上げる予定であった作者・作品の研究が、本研究の初年度である2012年度に予想外の進展を見せたため、研究計画の一部を前倒しして行った。初年度の研究予定に関しては、一定のリサーチ結果を得て、2013年度中に成果を公表する予定であるため、全体の進行に支障は無いと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画に従い、作家ジェイムズ・ジョイスの諸作品に見られる変容・変身のモチーフや断片的身体の表象を20世紀初頭の演劇・詩劇における身体表象と比較検討するリサーチを進め、2013年度中に成果を公表する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究図書・消耗品の購入、リサーチ及び海外研究協力者との研究打ち合わせの為の旅費に充当する。
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Research Products
(1 results)