2013 Fiscal Year Research-status Report
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24520326
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
藤井 光 同志社大学, 文学部, 准教授 (20546668)
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Keywords | 現代アメリカ文学 / 脱アメリカ化 / 寓話性 / 翻訳 / 移民作家 |
Research Abstract |
平成25年度の研究実績としては、次のものが挙げられる。 (1)英語での単著『Oustide America: The Temporal Turn in Contemporary American Fiction』(Bloomsbury, 2013)の出版、および日本語論文「十字路とアメリカ:リチャード・パワーズと多和田葉子における「交点」の文学について」(『れにくさ』)の発表による、21世紀のアメリカ文学が次第に「アメリカ」へのオブセッションを失っていく現象の記述。 (2)10月にアメリカ合衆国ニューオーリンズで開催された学会American Literature Associationにおける研究発表を通じた、新世紀のアメリカ文学を定義する「寓話性」という概念の探求、および、日本アメリカ文学会関西支部フォーラムでの研究発表、東京大学言語情報科学専攻シンポジウムでの講演での、文学研究の視座としての「翻訳」の重要性の探求。 (3) アメリカ作家ロン・カリー・ジュニア『神は死んだ』、および文芸誌『文學界』『新潮』『Granta Japan with 早稲田文学』におけるアメリカ作家の短篇の翻訳。 (4)京都新聞でのコラム執筆を通じたアメリカ文学を取り巻く現状の紹介。 とりわけ(1)と(2)を通じて、現代アメリカ文学における「脱アメリカ化」の現象はかなりの具体性と説得力をもって記述しうるものになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画は、3年間の研究を通じ、英語による二冊目の単著に向けた理論的・概念的な整備を行うというものであった。2年目にあたるH25年度においては、「脱アメリカ化」という現象において「翻訳」という概念が重要な役割を担うことが明らかになった。それにより、文学テクストの分析に翻訳論の成果を取り入れる試みが、手法として明確にされた。その意味で、理論的な面においてはかなりの進展があったものと考えている。その一方で、英語ではなく日本語での原稿執筆の機会が増し、最終年度にあたるH26年度においてはさらに日本語原稿を多く発表する機会があることにより、日本語の単著を先にまとめる可能性が高まっている。
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Strategy for Future Research Activity |
H26年度は、NHKラジオ『英語で読む村上春樹』のテキスト版にて、アメリカ文学を取り巻く状況の紹介する連載がすでに開始されており、それを通じて、現代アメリカ文学の姿を探求すると同時に、一般の読者にも広く研究を認知してもらう機会になるものと考えている。 また、「翻訳」をキーワードとした文学テクストの分析をさらに進めることで、比較文学における成果と、小説テクスト分析の手法を融合する形での文学研究のあり方を提示する必要がある。そのために、アメリカ文学にとどまらない研究者たちとの対話が重要になってくるものと思われる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
H25年度においては、作家へのインタビュー活動が大きな位置を占めるものと計画し、そのための旅費を計上していた。ただし、予定していたインタビューのうち、一件(セス・フリード)はEメールによるインタビューを選択したこと、一件(テア・オブレヒト)については実現しなかったこともあり、旅費をすべて執行するには至らなかった。 最終年度にあたるH26年度は、アメリカを中心とした作家や研究者との対話をより計画的に実行に移すため、海外学会や文芸フェスティバルに積極的に参加するだけでなく、日本語の単著の執筆に向け、日本国内の研究者とも意見交換の場を設けることにより、研究成果をまとめる助けとしたい。
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Research Products
(5 results)