2012 Fiscal Year Research-status Report
初期アメリカの体制反乱事件とその文化的・文学的影響に関する研究
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24520327
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
白川 恵子 同志社大学, 文学部, 准教授 (10388035)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
林 以知郎 同志社大学, 文学部, 教授 (90097858)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | アメリカ / 共和政期 / アンテべラム期 / 独立革命 / 組織的民衆反乱 / 奴隷反乱 / 人種 / 環大西洋 |
Research Abstract |
本件申請研究は、建国前後~アンテべラム・アメリカにおける組織的民衆反乱事件に関する総括的概要提示とその文学的・文化的影響について考察することを目的とする。研究初年度にあたる2012年度は、主に、1741年のニューヨークの奴隷反乱および1831年のナット・ターナーの反乱事件についての資料収集と、2011年に上梓されたSharon Ewellの小説が提起した『告白原本』に対する歴史的解釈について考察した。 具体的には、白川は、① 2012年8-9月に、マサチューセッツ州ケンブジッリおよびヴァージニア州リッチモンドでの資料収集およびProf. David D. Hall, Prof. Michael T. Gilmoreとの交流を行った。②Foster作品に対する口頭発表を日本英文学科関西支部大会シンポジウムにて行い、それを“Redemption and Reconciliation of the African American Liberator in Sharon Ewell Foster’s The Resurrection of Nat Turner.”にまとめ出版した。③また上記の組織的民衆反乱のスピンオフ・テーマとして、個人による反抗と復讐の一事例として、Okah Tubbeeのケースについて、the 2013 PCA/ACA National Conference (in Washington D.C. )にてパネル発表を行った(2013年3月)。 林は、①クーパー作品における海洋譚のひとつを例に、共和政期の海賊およびスパイ行為の背後に、抵抗の一時例を、環大西洋的視座から読み、口頭発表を行った。②クーパー作品分析に関連し、関連批評についての見解をまとめ、論文として完成させた。③さらに敷衍して、こうしたアメリカ研究を教育の場への適応と絡めてシンポジウム等を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度のNY Conspiracyに関する資料収集は、順調であり、また、そこから派生した事象・作品分析の成果も、口頭発表・論文出版とも、それなりの成果を上げている(以下の「研究成果」を参照)。もともと力点を置いていたNY Conspiracyについての、資料読み込みと事件概要の文字化による提示まで完了できていれば、申し分なかったのだが、派生テーマの広がりが想定以上にあったことは(本件研究課題をより複雑にしたきらいはあるものの)、うれしい誤算でもあった。2012年度は、研究開始初年度であるため、まだ包括的成果を生み出すには至らないが、両名とも、研究の成果を、口頭発表および論文として複数まとめているので、初年度としては、おおむね順調であると言ってよいだろう。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の予定どおり、2013年度は、2012年度に収集した資料の読み込みと分析、および執筆を行う。またそれと並行して、二つ目のテーマであるShays’ Rebellionについての資料収集を行う。最終的に、建国期前後~アンテべラム期に至るまでの民衆(奴隷)反乱事件とそれにまつわる文学作品の分析を通して、アメリカが国家の基盤理念とし、独立に際して大義名分として掲げた革命権の行使が、民衆によって試され、それが体制によって封じ込められた、いわば建国理念を転覆させる大事であった点を、具体的に示せるように努めたい。 従って、白川は、Horsemanden, Lepore, Zabin, Hofferrなどの資料を参照に、NY Conspiracyの概要をまとめつつ、Mat Johnsonによる同事件を描く小説分析も射程に入れ研究する。なお、Shaysの反乱に関しては、時間が許す限り、Edward Bellany作品の読み込みにも当たりたい。 林は、引き続き、難解かつ膨大なクーパーの分析を続ける。現在は、特に海洋譚にターゲットを絞った作品を扱っているが、すでに成した本作家研究の成果とあわせて、単著とすることも目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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