2012 Fiscal Year Research-status Report
第一次大戦時および戦間期のD・H・ロレンスとポピュラー・フィクションとの相関関係
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24520332
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kumamoto Health Science University |
Principal Investigator |
岩井 学 熊本保健科学大学, 保健科学部, 准教授 (70369859)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | D. H. Lawrence / Berta Ruck / 第一次世界大戦 / 第一次大戦期のイデオロギー / 英文学 / イギリス |
Research Abstract |
本研究は、ロレンスを中心とするいわゆるモダニズムのキャノンとされるテクストと、当時広く読まれながら現在は忘れられたポピュラー・フィクション、従軍記などのテクストとを併置し、両者の相関関係を、19世紀末から戦間期にかけて広く流布したイデオロギー、すなわち人種退化論、戦争による社会浄化論、帝国の衰退と維持といったイデオロギーの観点から分析するものである。 本研究は、ここ約一〇年の間に別々になされてきた、1) モダニズムの作家たちによるテクストを、第一次大戦期のイデオロギーから分析する研究と、2) キャノンでないとして光の当てられることの少なかったポピュラー・フィクションを、帝国のイデオロギー、ナショナリズム、第一次大戦期のイデオロギーといった観点から読み直す研究の両者を接続しようと試みるものである。 今年度はD. H. ロレンスにより1915年に執筆された短篇”The Thimble”とバータ・ラック(Berta Ruck)により同年に執筆された”The Infant-in-Arms”を比較・分析した。ラックは150冊以上の著作を残した、第一次大戦時の人気作家であったが、現在はアカデミズムの世界からもブック・マーケットからも忘れられた存在である。ロレンスのテクストと、当時は巷に広く流布したが現在は忘れ去れたラックのテクストとの比較研究から、ロレンスのテクストが、第一次大戦期に広く読まれたロマンスを揶揄し、批判する意図を持って書かれたものでありながら、当時のポピュラー・フィクションの持つ大戦のイデオロギーを共有してしまっているということが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
The 2012 International D. H. Lawrence Conference (the CREA research centre of the University of Paris-O.N.D.主催、於University of Artois)での口頭発表およびEtudes Lawrenciennesへの投稿をおこなうことができ、おおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
一次資料、二次資料の通読、分析を進め、第44回日本ロレンス協会におけるシンポジウム、The 13th International D. H. Lawrence Conferenceでの口頭発表、それをもとにした日本ロレンス協会編論集の執筆、D. H. ロレンス研究会編論集の執筆を通し、研究を進めていく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
物品費およびその他の経費が予定より若干下回ったため、全体で55,544円の余剰が出たが、25年度においてNottingham UniversityおよびBritish Libraryでの資料収集のための費用、The 2012 International D. H. Lawrence Conference (Paris)での口頭発表および一次資料、二次資料購入のための費用に充てる予定である。
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Research Products
(1 results)