2012 Fiscal Year Research-status Report
十八世紀ヨーロッパの描く異邦人像――ドイツとイギリスの通俗劇を中心にして
Project/Area Number |
24520335
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
佐藤 研一 東北大学, 国際文化研究科, 教授 (80170744)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤田 緑 東北大学, 国際文化研究科, 教授 (10219024)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 国際情報交換 ドイツ |
Research Abstract |
佐藤は、まず、ドイツ啓蒙を代表する探検家や思想家によるトルコ人ら東洋人、およびアフリカ人のイメージを見定めた。すなわち、フォルスターの『世界周航記』を素材にして、その非ヨーロッパ人像を抽出して、同じく複数座標軸に立つヘルダーの『人類歴史哲学考』や『人間性促進のための書簡』とも比較検討を加えた。この考察を通して、彼らの描く東洋人やアフリカ人が、当時の一般的異人像である「高貴な野蛮人」や教化すべき「蛮族」や啓蒙的観察対象とは、いかに異質なイメージを表しているか、明らかにした。ついで、この基礎的考察を踏まえて、夏季休暇を利用し、オーストリア国立図書館にて、18世紀ドイツの非ヨーロッパ人を題材とする通俗劇、すなわち「トルコもの」、「新大陸もの」、「南太平洋もの」、「アフリカもの」、「東洋もの」を、コッツェブーを中心に調査・収集を行った。また、フランクフルト大学にて、啓蒙期旅行文学研究の泰斗ヴーテノー教授やヒルメス教授と、18世紀ドイツ通俗劇の描く異邦人像に関して、稔り多い議論を交わすことができた。目下、これら異邦人像の特徴に分析を加えている。 藤田は、まず、サミュエル・ジョンソンの『アビシニアの王子ラセラス』や彼の翻訳した旅行記『アビシニア紀行』に描かれたアフリカ(黒)人のイメージを見極めた。前者は、後者に基づいたとされ、汎欧的に一世を風靡したが、このアフリカ人イメージは、18世紀後半まで大きく変転を遂げてゆく。これは、十八世紀中葉以降、富の象徴としての黒人小姓が中流層にまで流行する一方、逃亡奴隷や無産黒人が増加して、奴隷廃止運動が勃興する点と無関係ではない。黒人イメージは奴隷制賛否両論の錯綜のなかで、両極端の分裂をみるからである。目下、この点を跡づけながら、イギリス社会の変動を見極め、ビカースタフ等による黒人をテーマに据えた通俗劇を分析中である
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
夏季休暇を利用し、オーストリア国立図書館にて、「忘れられた」作家による東洋人登場の通俗劇の発掘に努めたが、これは難航した。その一方で、フランクフルト大学にて、啓蒙期旅行文学研究の泰斗ヴーテノー教授、およびヒルメス教授と、18世紀ドイツ通俗劇の描く異邦人像に関して、稔り多い議論を交わすことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
佐藤は、夏季休暇を利用し、フランクフルト大学にて、啓蒙期旅行文学研究の専門家ヒルメス教授と、18世紀ドイツ通俗劇の描く異邦人像に関して意見交換を交わすことに、いっそう力点を置く。さらに、オーストリア国立図書館においては、ドイツにおけるアフリカ黒人を主人公に据える通俗劇を博捜する。それと同時に、昨年度難航した、「忘れられた」作家による東洋人登場の通俗劇の発掘にも努める。 藤田は、夏季休暇を利用し、大英図書館にて、奴隷制賛成・反対両派のパンフレットの黒人イメージの調査とともに、黒人やトルコ人をテーマとする通俗劇の発掘にも傾注する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額は、主として、以下2点のために生じた。まず、当初の計画によれば、藤田は夏期休暇を利用して、大英図書館にて奴隷制賛成・反対両派のパンフレットの黒人イメージの調査、および黒人をテーマとする通俗劇博捜に傾注する予定であった。しかし、公務のために、次年度に延期せざるをえなくなったこと。ついで、コンピューターの納品もまた、次年度に延期したこと。次年度使用額は、延期した大英図書館の文献調査、およびコンピューター納入に必要な経費として平成25年度請求額と合わせて使用する予定である。
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Research Products
(3 results)