2013 Fiscal Year Research-status Report
中世フランス語版ボエティウス『哲学の慰め』の言語地理学的・文献学的語彙研究
Project/Area Number |
24520337
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
松村 剛 東京大学, 総合文化研究科, 教授 (00229535)
|
Keywords | 中世フランス語 / 地方語 / フランス語史 / 語彙論 |
Research Abstract |
本年度は前年度の研究に基づき、以下の研究を行った。 (1)ブルゴーニュ版ボエティウス『哲学の慰め』(Del Confortement de Philosofie) のテキスト確定を、オーストリア国立図書館に所蔵されている写本2642番の CD-Rom と、M. Bolton-Hall による校訂版("Del Confortement de Philosophie. A Critical Edition of the Medieval French Prose Translation and Commentary of De Consolatione Philosophiae of Boethius Contained in MS 2642 of the National Library of Austria, Vienna", Carmina Philosophiae, 5-6, 1996-1997)とを比較検討する作業を通して続行した。(2)各種辞書における『哲学の慰め』の引用再検討の作業を続け、それらの解釈の妥当性を文献学的に調査し、間違いがあった場合には訂正したのと合わせて、ブルゴーニュ版『哲学の慰め』の該当箇所と比較する作業を続行した。(3)従来看過されてきた興味深い単語・表現をブルゴーニュ版『哲学の慰め』から収集する作業を続行し、各種辞書・言語地図を活用し、それらの語彙の歴史的・地理的な意義を明らかにした。(4)ジャン・ド・マンによる『哲学の慰め』とブルゴーニュ版『哲学の慰め』との比較を続行し、単語・表現のレベルでの異同の研究を通して従来にフランス語史の知見を補足する作業を続行した。(5)関連するフランス語作品の収集を続け、校訂版の批判的検討を行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
13世紀前半にブルゴーニュ地方で作成された中世フランス語版ボエティウス『哲学の慰め』は、1997年に校訂版が M. Bolton-Hall によって刊行されたにもかかわらず、研究はほとんどされてこなかった。この校訂版自体、テキストそのものの校訂に関してかならずしも信頼がおけるものではないだけでなく、本文に含まれる多様な興味深い語彙の用例にまったく着目していなかった。今研究の2年目にあたり、オーストリア国立図書館写本の CD-Rom と校訂版を照合しつつ、テキストを確認し、重要な単語・表現をフランス語史と言語地理学の観点から研究する作業を続行することができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成25年度の研究に基づき、今後は以下の研究を行う。 (1)ブルゴーニュ版ボエティウス『哲学の慰め』のテキスト確定を、オーストリア国立図書館に所蔵されている写本2642番の CD-Rom と、M. Bolton-Hall による校訂版とを比較検討する作業を基に完成させる。(2)各種辞書における『哲学の慰め』の引用再検討の作業を完成させ、それらの解釈の妥当性を文献学的に調査し、従来の知見がいかに補足できるかをまとめる。(3)ブルゴーニュ版『哲学の慰め』に含まれる、歴史的・地理的に興味深い単語・表現の収集を完成させ、各種辞書・言語地図を活用しつつ、それらの語彙の意義を明確にする。(4)ジャン・ド・マンによる『哲学の慰め』とブルゴーニュ版『哲学の慰め』との比較を完成させ、単語・表現のレベルでの異同の研究を通して従来のフランス語史の知見を補足する作業をまとめる。(5)文献学・語彙論にとって必須の作業である、フランス語諸作品の校訂版の収集ならびに批判的検討を続け、その問題点、意義を明らかにする。
|
Research Products
(2 results)