2012 Fiscal Year Research-status Report
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24520339
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
桑原 聡 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 教授 (10168346)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | クンストカマー(ドイツ、ヨーロッパ) / ノヴァーリス(ドイツ) / Fr.シュレーゲル(ドイツ) / J.パウル(ドイツ) |
Research Abstract |
今年度の研究テーマは「ノヴァーリスにおけるクンストカマーの意義」であった。この目的のためノヴァーリスの断片、とりわけ「一般草稿 百科全書学のための資料」を分析した。 18世紀の終わりに収集の新しい制度が確立しつつあった。すなわち公共啓蒙空間としてのミュージアムである。それは近代科学の成立と軌をを一にしていた。フライベルク鉱山アカデミーで自然科学を学んだノヴァーリスは当時の最先端の科学に通暁していた。そのノヴァーリスが「一般草稿 百科全書学のための資料」として知られる断片州の中でクンストカマーに触れている。クンストカマーはルネサンス以来ヨーロッパの至る所で見ることのできた蒐集キャビネットであり、ミュージアムの成立とともに没落したものである。平成24年度はクンストカマーという「時代遅れ」と見なされていた蒐集形態の何がノヴァーリスを引きつけ、百科全書学に展開するはずであった新しい知の構想への刺激を与えたのかを明らかにした。 クンストカマーはミュージアムと異なり、収集品に区別をつけない。美術館、博物館といった区分けはクンストカマーには存在しない。自然のものも人工のものも、美術品も道具も区別なく蒐集された。その分類の本質は、「珍しいもの」Mirabiliaであった。珍しいものにおいてこそ自然・人間の創造力がもっとも明瞭に現れるとする考え方により集められた蒐集物は全体として世界・宇宙を代表するというのがクンストカマーの根本思想である。そこにはミクロコスモスとマクロコスモスの照応という古代以来続く世界観が看取できる。 ノヴァーリスは近代科学の成立とともに世界が調和と統一を失うという危機感を抱いていた。世界の調和の回復というノヴァーリスのユートピアにとってクンストカマーが一つのモデルを提供したことを明らかにしたことはノヴァーリス研究のみならず、知の構造転換論に大きな意義をもつ。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度の研究目的はほぼ達成された。 「研究実績の概要」に記したとおり、ノヴァーリスにとってのクンストカマーの意義を解明することができた。研究成果は『19世紀学研究』第7号(平成25年3月発行)の特集 Das Krisenbewusstsein zur Zeit der Romantik und Utopievorstellung (「ドイツロマン派の時代の危機意識とユートピア表象」編者:桑原聡)にDie Idee der Kunstkammer als ein Modell fuer die Enzyklopaedistik des Novalis(ノヴァーリス百科全書学のモデルとしてのクンストカマー理念」)として発表した。(17~31頁)
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度はノヴァーリスの他の断片の精査と、研究計画通り、Fr.シュレーゲルにおける詩学としての断片という思想を、ノヴァーリス研究で明らかにしたクンストカマー理念の観点から考察する。 Fr.シュレーゲルの詩学は、従来、ポストモダンを導く抽象的思想としてのみ扱われたきらいがある。彼の初期哲学・詩学を「断片」と「無限」を軸に分析することによって、彼の詩学をルネサンス以来の「蒐集」の思想=クンストカマーの思想に置くことができると予想している。そのことによってFr.シュレーゲルの思想は現代に至る方向のみでなく、過去に向かう方向においても西洋文化史の中に位置づけられると予想している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度は発注していた書籍が未着のため30,017円の残が生じた。しかし、この残は、平成25年度分書籍代金(430,000円)に加えて使用する予定である。 資料収集等のためのドイツその他への出張(400,000円)、国内出張(50,000円)および昨年度日程調整がうまくいかず実現できなかった研究者招聘のための旅費(100,000円)を予定している。 消耗品として20,000円を予定している。
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Research Products
(1 results)