2013 Fiscal Year Research-status Report
『百科全書』本文生成研究:「黙示的典拠」の解明と解釈
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24520342
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
逸見 竜生 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 准教授 (60251782)
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Keywords | 十八世紀研究 / 思想史 / 『百科全書』 / ディドロ / 国際研究者交流(フランス、スイス、韓国) / 国際情報交換(フランス、スイス、韓国、アメリカ) |
Research Abstract |
本研究の主たる目的は、『百科全書』材源研究に焦点を定め、本文内で明示化されていない「黙示的典拠」の特定とその解釈を系統的かつ包括的に行うことにある。今年度は特に、そのうち、I. 比較照合法による黙示的典拠の特定:医学・生理学および関連分野に分類される『百科全書』項目について、ディドロの執筆項目を解析しi)具体的にいかなる黙示的テクストが材源として用いられているか、ii)その範囲はどの程度に及ぶか、iii)材源の選択に執筆者ごとの差異は見られるかについて、同時代コーパスの比較照合法によって特定し、それとともに II.本文における材源の転用様態の解明:黙示的典拠はいかにテクスト本文のうちに組み込まれているのか、それぞれの引用者による原テクストの「転用」(appropriation)の具体的様態の比較分析を行った。 その過程で、海外研究機関における調査研究、ならびに国外の研究者との共同研究を特にフランス(パリ、リヨン、エクスアンプロヴァンス、マルセイユ、ナントおよびモンペリエの各大学)、及び韓国(ソウル大学)において行っている。特に、第5巻以後の材源研究、および転用様態の研究、歴史コンテキスト研究を順次行っていく。国内外での講演、研究集会、シンポジウムの参加を始め、発信型の活動にも力を入れた。とりわけ欧米で組織される国際的な共同研究組織と連携を強め、この企画をさらに進める次の段階に向けての準備に入っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ディドロを中心とする『百科全書』における転用研究については、広範囲にわたる資料の解析が進み、多くの点が新たに解明されたことは喜ばしい。その達成は当初の計画予定よりも更に進んでいる。一方で、ジョクールにおける分析は計画より立ち後れており、来年度以後の分析解明がいっそう必要である。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画のIII.「転用行為の言説史的解釈とコンテキスト化【平成26年度・平成27年度】」に進む。 この第III群では、第I群および第II群で示された転用行為の意味を包括的・批判的に解析する。従来、この点については断片的で通説的な解釈が示されてきたが、いずれも十分に説得的であるとは言いがたい。 申請者が予備的に調査したように、これらの黙示的な転用行為およびその「意図」(「発語内的力」Skinner, 1988の概念をここでは援用することができる)は、言説史の地平、すなわち18世紀啓蒙期文芸的公共圏における言説生産の慣習、制度、イデオロギーというコンテキストに位置づけることによって、より系統的に解釈しうる。この点に留意し、研究をさらに大きく進めていきたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
国内外の他機関による招聘資金等の提供、および科研費共同研究および学内競争的資金等により、予定よりも研究費利用が低く抑えられたため。 予定された使用計画を適正に進め、生じた助成金を含む使用額を順当に利用したい。
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Research Products
(10 results)