2013 Fiscal Year Research-status Report
同時代のパリにおけるラフカディオ・ハーンの受容に関する研究
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24520343
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
中島 淑恵 富山大学, 人文学部, 教授 (20293277)
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Keywords | ラフカディオ・ハーン / ベル・エポック / ジャポニスム / 俳諧 / ルネ・ヴィヴィアン / ポール・リヴェルスダール / 『二重の存在』 / 『骨董』 |
Research Abstract |
2013年7月20日、ソルボンヌ大学で開催された第20回国際比較文学会において、「パリの同時代人によるラフカディオ・ハーンの受容―ベル・エポックにおける文学的ジャポニスムについて―」の表題でフランス語で発表を行った。これまでの研究成果を踏まえ、ラフカディオ・ハーンの諸作品が英語で発表されたばかりの1900年代初頭に、フランス語による翻訳を待つことなく英語で直接影響を受け、自らの文学生産の糧としていたパリ文壇の作家たちについて例証しながら発表を行った。ラフカディオ・ハーンの同時代のパリにおいてラフカディオ・ハーン作品が英語から受容されていたことを例証した稀有な発表となり、国際的にはあまり知られていないラフカディオ・ハーンの功績を再評価する提案ができたものといえる。また、ラフカディオ・ハーンの英訳を経由してフランス語に訳された江戸時代の俳諧の数々は、フランスに俳諧という詩形式が導入された最初期のことであることも証明された。また、同時代にすでに和歌の導入は様々な形で成されていたことが知られているが、和歌に比べて俳諧の導入は数十年遅れ、1900年代ごろから少しずつその詩形式としての斬新さがフランスでも評価されるようになる様子を、ジュディット・ゴーティエの『蜻蛉集』と比較して論じた点も目新しい成果である。2013年8月にフランス国立図書館で行った調査では、このあたりに焦点を定め、1900年代初頭のフランスにおいて俳諧がどのように導入され、それは和歌とはどのように異なるものとして受け止められていたかについてある程度解明することができた。また、このような俳諧のフランスへの導入において、間接的とはいえラフカディオ・ハーンの果たした役割が大きいものであることも歩い程度解明できた。今後は仏教思想との関連も含め、さらなる同時代フランスでのラフカディオ・ハーンの受容について解明することにしたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
国際学会で発表を行ったことによって、ラフカディオ・ハーンの国際的な評価や同時代における受容のあり方の違いについて様々な国の研究者と意見交換を行うことができ、とくに和歌と俳諧の詩形式としての違いについて見識を深めることができた。また、その後にフランス国立図書館および富山大学付属図書館のヘルン文庫で行った調査によって、1900年代初頭におけるラフカディオ・ハーンのフランスにおける受容の在り方と、フランスで、俳諧が新しい詩形式として認識されるにいたる経緯と当時の人々の理解について見識を深めることができた。また、このことが単なる詩形式の変遷だけでなく、仏教思想または日本人特有の無常観に裏打ちされた美学の西洋での受容や理解と深くかかわっていることを解明することができた。このことにより、美術史上の流行現象とされ、1900年代にはすでに退潮を迎えていたジャポニスムが、文学や思想の分野においてはさらに深化し、西洋人の心の中に根差していったさま、それまでの西洋的な価値観とは一線を画する東洋的な価値観や死生観に至るまで影響を受けている様子を観察することができた。今後は、これをさらに発展させ、同時代のその他の作家の作品にあたり、こうして醸成された思想的精神的ジャポニスムとでもいった現象が、西洋文壇においてどのような成果を挙げるに至ったかについて具体的な作品を渉猟しながら裏付けを行ってゆくことにしたい。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、さらにラフカディオ・ハーンの仏教思想とりわけ地獄についての知識が、同時代のフランスまたはイギリスにおけるダンテの受容とどのように関連しているかという見地から研究を掘り下げてゆく予定である。まず、富山大学付属図書館のヘルン文庫の蔵書及び研究書から、ハーンの地獄観の変遷、西洋的教養による地獄理解が、日本における仏教徒の出会いや仏教思想における地獄観を知ることによってどのような変容を遂げているかについて確認作業を行いたい。そのうえで、そのようなハーンの地獄理解が、同時代のヨーロッパではどのように受容され、新たな文学作品が生み出されていったのかについて研究を行いたい。ついては、同時代の有名・無名の作家および文学作品を渉猟する必要があり、フランス国立図書館の蔵書によらなければ調査は不可能であると同時に、英国での状況を解明するためには、大英図書館等英国の図書館における調査も必要であると考えられる。それらの成果を踏まえて論考を発表するほか、国際シンポジウムの開催によって関連する時代の諸領域の専門家たちと意見交換を行い、20世紀初頭の西洋と東洋の結節点においてダンテ理解がどのような変容を遂げているのか、またハーンがそこでどのような役割を果たしているのかについて解明し、同時代あるいは後世の作家たちにどのような影響を及ぼしているのかについて論考を行いたいと考えている。
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Research Products
(3 results)