2012 Fiscal Year Research-status Report
『フランス・ジャポン』研究―大戦前夜の在仏邦人の出版活動
Project/Area Number |
24520345
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
渋谷 豊 信州大学, 人文学部, 准教授 (70386580)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 日仏比較文学 / 日仏交流史 / 近代文学 |
Research Abstract |
本研究は両次大戦間のパリで日本人グループが行った出版活動の実態と意味を多角的に検討し、日仏交流史に新たな光をあてようとするものである。主な分析対象は二つの日仏交流誌、すなわちRevue franco-nipponneとFrance-Japon、およびそれらの関連文献であり、当該年度はFrance-Japonを取り上げた。 France-Japonは文化交流のための雑誌であると同時に、満州事変以降、国際舞台で孤立を深めてつつあった日本の「対外宣伝誌」としての性格をも持つ。当該年度は特にその点に着目して、二つの作業を進めた。一つは、当時の日本の対外宣伝活動全般における同誌の位置づけをめぐる調査・分析であり、具体的には主に日本の国際文化事業の中枢であった国際文化振興会と同雑誌編集部との関連を探った。もう一つは、当時のフランスの世論に同誌が及ぼした影響の検討であり、具体的にはフランスの主要な日刊紙(とくにFigaroとLe Matin)における同誌への言及を精査した。さらにそれに関連して、フランスの親日派グループと同誌との関わりについても調査した。その結果、これまで知られていなかった事実(たとえば1939年にパリで開催された「日本舞踏博覧会」の持つ意味とか、独ソ不可侵条約締結後にフランスの新聞に現れた親日的論説の背景など)が明らかになり、一定の成果が上がったと言える。 一方、同誌の文化関連記事の中で重要な位置を占めるのが、日本近代文学の翻訳・紹介であることに着目し、特に近代の詩の仏訳の特徴と質を明らかにするための作業をも進めた。その結果、フランス詩の影響を受けた日本近代詩をフランス語に翻訳する際にどのような戦略がとられたのか、という課題が浮上した。なお、同誌の編集に携わった人物(とくに松尾邦之助)に関する伝記的調査も行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度は主として、I「France-Japonと日本の国際文化事業機関との関係」、II「France-Japonとフランス親日派グループとの関係」、III「France-Japonに対する同時代の日本の評価」について研究する予定であった。実際にそのすべてに着手しており、特にIとIIに関しては、予期していなかった重要な資料(国際文化振興会関連の資料など)が見つかり、当初の計画以上に研究が進化・深化している。ただし、それだけにIとIIに時間をかけることになったため、IIIに関する調査がやや手薄になった感がある。
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Strategy for Future Research Activity |
原則として当初の計画に基づいて研究を推進する。ただし、H25年度の課題の一つとしていた「France-Japonに掲載された日本の文学作品の選択基準とフランス語訳の質」の検討については、すでに本年度に検討に着手したため、H25年度はいくらか時間的に余裕ができるものと考えられる。その分、本年度の課題であった「France-Japonに対する同時代の日本の評価」をめぐる調査を引き続き行うこととする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
原則として当初の計画に基づいて研究費を使用する。ただし、当初の計画では、二度の海外出張を本年度実施する予定であったが、研究の進捗状況により、一度だけの海外出張にとどめた。それゆえ、次年度使用額が生じている。次年度は、フランス国立図書館における資料の調査・分析のための海外出張の期間を、この次年度使用額の分だけ当初の予定よりも長くする。
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