2013 Fiscal Year Research-status Report
『フランス・ジャポン』研究―大戦前夜の在仏邦人の出版活動
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24520345
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
渋谷 豊 信州大学, 人文学部, 准教授 (70386580)
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Keywords | 日仏比較文学 / 日仏交流史 / 近代文学 |
Research Abstract |
本研究は両次大戦間のパリで日本人グループが行った出版活動の実態と意味を多角的に検討し、日仏交流史に新たな光をあてようとするものである。主な分析対象は二つの日仏交流誌、すなわち Revue franco-niponne とFrance-Japon、およびそれらの関連文献であり、当該年度は特に両誌と関わりの深かったフランス人執筆者の仕事を対象とした。 フランス人執筆者の中でも特に着目したのはルネ・モーブランである。ルネ・モーブランはフランスでも日本でもこれまで研究対象となることがあまりなかったが、彼がRevue franco-niponne およびFrance-Japonに寄稿したエッセーや詩をめぐって考察することにより、両誌がフランス・ハイカイ(日本の俳句を模したフランス語の短詩)運動の看過すべからざる一つの舞台となっていたこと、とりわけフランス・ハイカイの形式上の実験の場になっていたこと、が明らかになった。また、そもそも彼が両誌と関わるようになった経緯を探ることによって、パリの日本人社会との交流の実態も明らかになった。パリを舞台とする当時の草の根的な(つまり政府主導ではない)文化交流の、これまで知られていなかった一面が浮き彫りになったと言える。 他方、両誌の文化関連記事の中で重要な位置を占めるのが、日本近代文学の翻訳・紹介であることに着目し、特に近代詩の仏訳の特色および作品選択の基準を明らかにする作業を、前年度に引き続いて行った。 さらに、両誌のビジュアル面(写真、レイアウト、グラフィックなど)の特色の分析も進めたが、その結果、当時、日本人が刊行していた他の文化交流誌・対外宣伝誌(特に名取洋之助が主宰していたNippon)との比較検討を行うことによって、さらに視野が広がるはずだ、という課題が浮上した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度は主として①『フランス・ジャポン』のヴィジュアル面(写真、レイアウト、グラフィックスなど)の特色 ②『フランス・ジャポン』に掲載された日本の文学作品の選択基準とフランス語訳の質 ③『フランス・ジャポン』に掲載されたフランス人作家の文章の特質 について研究する予定であった。そして、実際にそのすべてに着手し、特に③については、先行研究の少ないルネ・モーブランに光を当てることで、当初の計画以上に研究が深化していると言える。さらに、『フランス・ジャポン』一誌だけではなく、Revue franco-nipponne(ある意味で『フランス・ジャポン』はその後継誌である)をも研究対象とすることによって、考察に広がりが生まれてもいる。ただし、当該年度はもっぱら調査・分析に力を注いだため、研究成果をまとめ、発表するのに時間を割けなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、当初の計画通り、特に『フランス・ジャポン』に対する同時代のフランス人読者の反応を対象にして研究を進める。具体的に言えば、フィガロ紙など、『フランス・ジャポン』に関心を示していたことが判明している新聞雑誌のバックナンバーを精査し、同誌に関する記事をピックアップして分析するのが、研究の軸になる。また、積極的に研究成果を発信する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初計画よりもフランス滞在日数を減らしたことにより次年度使用額が生じた。また26年度に刊行される書籍を購入するために繰越し額も生じた。 H26年度に刊行されることがH25年度中に判明した書籍(雑誌『ルヴュ・フランコ・ニッポンヌ』の全バックナンバーの復刻版。ゆまに書房より近刊予定)を含め、『フランス・ジャポン』と関わりの深い書籍の購入、および、フランス国立図書館での調査を目的としたフランス滞在に使用する。さらに、国会図書館等における調査を目的とした国内出張のために使用する。
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