2013 Fiscal Year Research-status Report
メドヴェージェフの「巡回劇団ノート」研究―バフチン〈友人名義の著作〉への一視角
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24520346
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
佐々木 寛 信州大学, 全学教育機構, 教授 (70153997)
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Keywords | メドヴェージェフ / バフチン / ヴォローシノフ / 巡回劇団ノート |
Research Abstract |
1.早稲田大学図書館でのロシア語文献(1910年代のロシア・シンボリストの著作、および1910~1920年代のフォルマリストの著作)とロシア語雑誌の調査を、計7回行ない、バフチン・サークルのメンバーが活躍する背景となった、1917年の社会主義革命前後の文学的、文化的環境の解明に努めた。これは、『巡回劇団ノート』の各号を読み解くために欠くことのできない、大事な基礎作業である。 2.パーヴェル・メドヴェージェフ (1892-1938) の子息のユーリー・メドヴェージェフが、1995年に刊行されるはずだった《バフチン・サークルの著作》シリーズ第3巻の、P・メドヴェージェフの著作集のために準備した解説原稿(この著作シリーズは第1巻のヴォローシノフの著作集が出た後、版元の倒産で第2巻と第3巻が刊行されずに終わった)の翻訳作業に取り組んだ。本文と注釈とを合わせて400字詰めで300枚くらいのうち、本文の180枚分を訳了した。 次いで注釈の訳出作業に取り掛かったが、2013年10月に著者のユーリー・メドヴェージェフが亡くなったために、執筆者本人に確認しなければ分からない個所をいくつも残したままで訳出の作業を進めなければならなくなった。 本来の予定では、平成25年度内にこの解説原稿を訳了して冊子にし、日本ロシア文学会の会員を中心に配布する予定だったが、年度内に仕上げることができなかったために、平成26年度に繰り越すことにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
解説原稿著者のユーリー・メドヴェージェフが亡くなったために、執筆者本人に確認しなければ分からない個所をいくつも残したままで訳出の作業を進めなければならなくなったため。
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Strategy for Future Research Activity |
ユーリー・メドヴェージェフの解説原稿の訳出に当たっては、亡くなった著者に代わって、夫人のダリア・アレクサンドロヴナ・メドヴェージェワに分からない個所の問合わせを行ない、対処する予定である。氏は、バフチン・サークルの活動に関する一連の論文に執筆者として夫君と共に名前を連ねているので。 ユーリー・メドヴェージェフの解説原稿を訳出したものを26年度内に冊子にして、日本ロシア文学会の会員を中心に配布する。 調査対象である劇団の機関紙『巡回劇団ノート』50余号のうち、すでにコピーを入手できている40号分についての調査を行ない、同紙の書評その他でP.N.メドヴェージェフがとり上げているフォルマリストや西欧の美学者の著作が、1928年刊のメドヴェージェフ著『文芸学の形式的方法』にどのようにとり入れられているかを明らかにして、後日、論文にまとめて発表するための準備を進める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初計画では、ユーリー・メドヴェージェフの解説原稿を翻訳して冊子にし、配布する予定であったが、研究の進捗状況により、次年度実施することとなったため、次年度使用額が生じた。 継続購入している『正教大事典』の年度内の刊行巻数が、予定よりも2巻分少なかったため、次年度使用額が生じた。 次年度使用額の167,745円を、ユーリー・メドヴェージェフの解説原稿の翻訳を冊子にして配布するために使用する。 平成26年度使用額260,000円のうち、120,000円を、継続刊行中の『正教大事典』、科学アカデミー版ロシア語大辞典、その他のロシア語辞典購入のために使用する。35,000円を、研究室整理用資材、プリンターのトナー、USBメモリー購入のために使用する。105,000円を、早稲田大学図書館での文献資料収集と学会での研究情報交換のための出張旅費に使用する。
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