2013 Fiscal Year Research-status Report
19世紀末フランス文学におけるゴシック・リヴァイヴァルとヘレニズム
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24520348
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
加藤 靖恵 名古屋大学, 文学研究科, 准教授 (90313725)
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Keywords | フランス文学 / ゴシック建築 / エミール・マール / ラン大聖堂 / プルースト |
Research Abstract |
フランス学士院図書館のエミール・マール草稿資料の調査を本格的に開始した。対象としたのは,『13世紀フランス宗教芸術』と『12世紀フランス宗教芸術』執筆のための資料収集の際にマールが残したメモ群である。大半が鉛筆で走り書きされたこの資料は,解読が困難であるため,まずは本研究に関係するものをできるだけ正確に筆写した上で,分類をしている過程で,この作業は年内に大幅に進展した。その上で,刊行されたテクストとの差異にも着目し,マールの評論の生成過程もたどっている。ゴシック建築における図像学的研究を進めるにあたって,本年度は特に最後の晩餐と聖母の死の挿話に関連したものに焦点をあてた。特に着目したのはラン大聖堂(フランス)の彫刻とステンドグラスである。これについては12~13世紀の作品の分析を進める一方,19世紀末に彫刻部門の最高責任者のジェオフロア=ドゥショームがあらたなに創作した作品も導入して行った修復の実体と,これををめぐる当時から今日に至るまでの言説も分析した。この大聖堂の彫刻のモチーフの生成を歴史的に解明するべく,中世ギリシアとイタリアにおけるキリスト教美術の動向も併せて調査した。 19世紀のフランスの美術評論や文芸におけるヘレニズムの動きについてもさらに事例を集め,論文の形にまとめることを目指している。 上記のテーマについて,マルセル・プルーストとその同時代のフランス文学における批評や描写のリストアップも行い,分析した。その成果の一部は,一般市民向けの講演,日仏の学術論文の形で発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
エミール・マールの草稿資料という新資料の導入により,昨年度は研究計画の修正がやや必要であったが,2度のフランス調査滞在を有効に使い,論文の形で成果をまとめながら順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
エミール・マール草稿のメモにより,マールが参照した資料や調査を行った建造物,彫刻,壁画を調査しながら,19世紀後半のゴシック美美術受容について考察を深める一方,フランスとイタリア・ギリシアの美術史上の位置関係について検証する。 また文学作品における関連の言説の収集と分析も引き続き行う。特に19世紀後半のヘレニズムの動きが文学でいかに反映しているか,具体的な事例を集めて考察する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
購入予定を予定していた図書の年内注文が間にあわず,当座の研究のため,他大学の図書館を利用したため。 研究遂行に必要な資料を計画的に購入するとともに,美術史研究者のレビューをあおぐ費用とする。
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Research Products
(4 results)