2012 Fiscal Year Research-status Report
抑制できない欲望をめぐる古代ギリシア・ローマの価値観
Project/Area Number |
24520350
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
チエシュコ マルティン 京都大学, 文学研究科, 准教授 (80590489)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高橋 宏幸 京都大学, 文学研究科, 教授 (30188049)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 国際研究者交流 / 国際情報交換 |
Research Abstract |
一年目は、ホメーロスをはじめとし、ギリシャのアルカイック時代(前8世紀―前6世紀)の作品から新喜劇まで文学的分析を行ってきた。24年度9月にアテネで文学作品と関連文献の資料収集を行った。それと同時に、アテネで古典学の学者との交流も深めた。 社会階級の欲望の描写にどのような相違点が出てくるか、貴族のプロパガンダでもある文学は欲望をどのように素性に結びつくのか、というテーマに注目したが、一番興味深い文学的要素は、リアリズムを目指すジャンルである新喜劇がどうやって一般人、社会階級、貴族の道徳と、規範を逸脱した行動を評価や定義するか、ということにあると思われる。 紀元前4世紀の、ペリパトス哲学派、古典期の悲劇、ギリシャ神話などに影響されたジャンルが抑制できない欲望をどう見做していたか、という問題に集中していた。その結果は、フライブルク大Zimmermann教授の共同研究に参加して、ピレーモーンという新喜劇作者のコメンタリーを執筆することになる可能性が高い。それで、研究の結果が国際的にも知られていくはずである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ギリシャ文学全体の分析が限られた時間では不可能なので、あえて貴族と新喜劇に集中した。それはもとの計画から脱線していない。むしろ、ある特定の作家を取り上げるため、欲望の像がもっとはっきり見えてきた。ある意味では、古代人の感情が現代のEmotionsと違うことにも注意をむけられた。 特に新喜劇が、ペリパトス派のアイディアと一般的な信仰(popular beliefs)を取り入れたため、分析しやすい。新喜劇に登場する人物の極端な感情の描き方が、これから興味深い結果につながるに違いない。日常生活を描写するジャンルともいえるが、その一方、哲学と古典期の悲劇作品の影響も大きいため、興味深い矛盾や信仰の摩擦もうかがえる。
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Strategy for Future Research Activity |
この一年間はピレーモーンに集中したい。アテネとフライブルクの学者の知り合いとの交流も深めながら、ヨーロッパで発表したり、論文を出したりしたい。フライブルクのゼミナールと共同研究の形で研究を進めていきたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
書籍、出張(アテネ、ドイツ)
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