2014 Fiscal Year Annual Research Report
『失われた時を求めて』の歴史的背景に関する総合的研究
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24520351
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
吉川 一義 京都大学, 文学研究科, 名誉教授 (30119870)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | プルースト / 失われた時を求めて / 歴史的背景 / 小説創作の秘密 / 翻訳と注解 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、フランスの作家プルーストの長篇小説『失われた時を求めて』が、どのような政治、社会、文化、言語の背景をもとに成立しているか、それらの事象がどのように作中に取り込まれ、それが小説としてどのような機能を果たしているかを解明し、プルーストの小説の独自性と普遍性の秘密を解明することを目的とした。 平成24年度から26年度の3年間、新聞雑誌など当時の一次資料を広範に調査し、とくに『失われた時を求めて』の前半にあらわれた政治、外交、社会、文化、言語などの事象がどのように『失われた時を求めて』に取り込まれたかについて、小説本体や初期作品や批評文だけでなく、作家のメモ帳、草稿帳、校正刷、書簡集などの資料を調査することにより、現実の受容から創作へのプロセスを実証的に明らかにできた。さらに『失われた時を求めて』の成立の秘密、現実とフィクションの関係についても新たな見取図を描くことができた。 とくに平成26年度には、作中の社交界の会話のなかに、いかに政治、社会、文化の事象がとりこまれ、それが小説でどのような役割を果たしているか、現実の事象からフィクションに至る創作の過程を、作家のメモ帳、草稿帳、校正刷、書簡集などの資料に基づいて検証し、その成果を口頭発表や、『失われた時を求めて』の翻訳(岩波文庫)の第7巻の翻訳と訳注に取り入れた。専門研究と一般読者をへだてる壁をとり払い、フランス文学研究の専門的成果を広く日本の読書人に公開するという本研究の目的の一端は実現できた。
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Research Products
(7 results)