2013 Fiscal Year Research-status Report
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24520366
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Research Institution | Wakayama Medical University |
Principal Investigator |
西村 賀子 和歌山県立医科大学, 保健看護学部, 教授 (30180649)
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Keywords | ホメロス / オデュッセイア / 受容研究 / 古代ギリシア演劇 |
Research Abstract |
今年度の研究の成果としては、論文2本、口頭発表1回があげられる。ギリシア抒情詩(エレゲイア)の翻訳が大詰めにさしかかっていることや集中講義と原稿の依頼が多かったことなどから、今年度は論文作成に関しては、研究課題のテーマでまとまった論文を書くことができなかった。 とはいえ、集中講義(京都大学)の内容は、課題に直接的に関係するものであった。院生を含め、学部学生がメインの集中講義なので、これまでの研究成果を分かりやすく、また興味深く伝達することに主眼を置いた。研究成果の社会的還元という点では意味があったと思う。 今年度は、かつて海外で発表したまま投稿していなかった研究を紀要に発表することにした。あわせて、これは依頼原稿であるが、ギリシア悲劇と喜劇の日本における上演の研究を学術的な商業雑誌(『文学』3,4月号)で発表した。 この2論文は対象が『オデュッセイア』ではなくギリシアの演劇ではあるが、受容研究という点では課題と関係があると言えよう。 以上の論文のほか、課題から発展させたテーマについて予備的研究(『オデュッセイア』のエウリュクレイアをめぐる考察)を口頭発表した。これは平成26年の夏には論文として結実する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
日本西洋古典学会での学会発表(2012年6月)とそれに続く学会誌への論文投稿、そして課題に直接関係する書物を2012年7月に刊行した結果、書きたいことはかなり書いてしまって、いわば虚脱状態というか空白状態になったというのが一つの理由だと思う。しかし、逆に、書物や学会発表のための研究の過程で生まれた疑問点もいくつもある。今年度はそれらを発展させる予定であったが、思ったほどには発展させる時間がなかった。エレゲイアの翻訳ももう7,8年越しなので早く完成させなければならない。
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Strategy for Future Research Activity |
一昨年の学会発表と昨年公刊した学会論文では、オイコス(家)再構築を目指すという視点から『オデュッセイア』を解釈した。この方向性を、昨年度は奴隷の観点からさぐったのであるが、これをもう少し深めたい。その延長上には最終巻の解釈も視野に入ってくることになろう。 昨年も書いたことだが、Boedeker教授の着目する、歴史家たちが一方ではホメロスを批判しながら、他方ではホメロスの伝統を引き継いだ記述を採用した点について、再度考えてみたい。 さらに受容研究という観点では、ピッツバーグ大学のメイ・スメサスト教授から日本におけるエウリピデス受容研究の援助を依頼された。具体的にはエウリピデス作品の日本における翻訳と上演についての情報の精度を高めることであるが、Brill's Companion to Euripidesに収録される予定である(ただし、契約締結期間が過ぎていることから共著者にはならない)。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
昨年度内に経費を消化すべきところであったが、年度末に論文作成などに追われた関係で発注すべき書籍の選定のための時間が大幅に不足し、また参加すべき研究会も年度末には開催されなかったため、若干の額について未消化が生じてしまった。 今年度は最終年度であるため、なるべく早めに発注計画や出張計画を立て、科研費を研究に有効に無駄なく使えるように努力したい。
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Research Products
(3 results)