2013 Fiscal Year Research-status Report
フロベールおよび同時代作家における白昼夢の形象とその歴史的文脈
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24520375
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
橋本 知子 立命館大学, 経営学部, 非常勤講師 (60625466)
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Keywords | 国際情報交換 / フランス・パリ / フランス国立図書館 / 国立科学研究センター |
Research Abstract |
ギュスターヴ・フロベール(1821-1880)を中心とする十九世紀フランス文学において、白昼夢およびその変形としての諸現象(幻覚・錯覚・幻影・幻想)といった無意識の表出がいかにして描かれているかを分析し、十九世紀の文学と医学とが培った関係について問いなおす。また当時の医学書を参照することにより、文学作品が科学言説を受容しつつもいかにして文学独自の方法によって内面の表出を描いたかという問題を、文献学的に考察する。 昨年度は、白昼夢およびその変形としての諸現象(幻覚・錯覚・幻影・幻想)の描かれている十九世紀フランス文学を、複数のキーワードをデータベース検索に用いることで、網羅的にコーパスを査定していくという、概観的研究に従事したが、当該年度はこうした成果をもとに、白昼夢が物語において、科学的見地にも美学的見地にも、決定的な役割をになっていると思われる作品をいくつか絞りこみ(主にフロベールおよび自然主義文学)、それらを精読するという具体的分析の段階に移行した。 また、同時代の科学言説を文学作品との比較において検討するため、フランス国立図書館において文献調査を行い、十九世紀の資料およびそれに関わる研究論文(具体的には十九世紀の批評家イポリット・テーヌの著書およびテーヌについての研究書や論文)の収集調査を行った。 十九世紀フランス文学に対するイポリット・テーヌの影響はよく知られているとはいえ、テーヌの論じている生理学的見地からみた白昼夢との関係については、未だ具体的分析が不十分であり、そうした意味でも、生理学という、身体性の問題を通して、十九世紀フランス文学を再読してゆく所存である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り、当該年度において白昼夢が物語の転回点に現れている作品を限定し、テクスト分析を行った。また、同時代の科学との関係を問うために細菌学の影響についても分析を行った。 パストゥール、コッホを始めとする細菌学が1880年代に発展したのは周知の事実であり、前年度の研究の延長として、そうした同時代科学がどのような形でフランス文学に作品化されているかを考察した。同時代の牽引的地位にあった科学は、しかし細菌学にとどまらない。前年度の研究実地状況報告書で計画した通り、細菌学以外の科学として、生理学と精神医学とに焦点をあて、研究視野をさらに拡げることで、十九世紀フランス文学における同時代科学の影響を多面的に検討した。 主な成果として、フロベール、ゾラ、モーパッサンという、現実主義・自然主義と呼びならわされる三人の作家を、イポリット・テーヌからの影響関係という点で比較検討した。作風を異にする三人の作家はみな、テーヌの著書に親しみ、テーヌが生理学的見地から論じた白昼夢の科学的説明に通じていた。しかし白昼夢の描き方は三者三様である。こうしたテクスト的差異を分析することで、文学作品が科学的言説を各々の作家固有の方法で受容している点を明らかにし、文彩(フィギュール)でなくては表しえない科学的思考の文学的表現法について検討した。 「おおむね」順調に進展している本研究であるが、予期せぬ問題点も挙げられる。当初の計画では、「フロベール以後」の時代のフランス文学、つまり1880年代の作品分析を前年度で終了し、当該年度においては、「フロベール以前」の時代、つまり1830年代の諸作品へと比較の対象を移行させる予定であった。しかし前者のコーパスは大がかりであるため前年度の研究だけでは終了は不可能であり、当該年度にまでずれ込む結果となった。よって後者の分析が今後の研究課題のひとつとなるといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
当該年度は本研究の最終年度にあたるため、作品分析を続行するとともに、今まで行ってきた諸分析の統合を行う予定である。そのために、以下の二点を研究の主軸とする。 まず、フロベールを中心とする文学作品における白昼夢の形象を分析するにあたって、フロベールと「フロベール以前」(1830年代のロマン主義)および「フロベール以後」(1880年代の自然主義)を、それぞれ比較の対象とし、前年度は主に後者の分析に力点を置いていた。今後もこの時代の作品分析を継続させる、研究をより深めると同時に並行して、当該年度は前者の分析も行う。さらに余力があれば、20世紀ヌーヴォーロマンの作品における白昼夢の形象化との比較分析も行いたい。 次に、いままでの研究を具体的な成果として表すべく、公の場への発表を積極的に試みる所存である。現在までのところ資料収集と作品分析に終始していたが、今後はその結果を活字にまとめてゆく。前年度に行った研究発表を加筆・改稿すると同時に、フランス語での論文執筆をも試みる。
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Research Products
(3 results)