2013 Fiscal Year Research-status Report
18世紀フランスにおいてリベルタン文学と版画が果たした役割についての研究
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24520376
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
関谷 一彦 関西学院大学, 法学部, 教授 (40288999)
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Keywords | フランス文学 / リベルタン文学 / リベルタン版画 / 春画 / フランス18世紀 |
Research Abstract |
サドの『閨房哲学』の翻訳を完成させた。本書はリベルタン文学がたどり着いた集大成とも言うべき作品であり、これまでにも多くの訳書が出ている。しかし、その多くは抄訳であり、また全訳にしても注や解説がない。そこで、拙訳ではこれまでフランスで出版された『閨房哲学』の批評版を参考にしながら、詳細な注を付け、解説を付すことにした。この翻訳は水声社の『サド全集』第1巻に収録されることになっているが、『閨房哲学』とともに第1巻に掲載される『ソドム120日』の翻訳が遅れているために、出版までにもう少し時間がかかる。 論文「サドの『閨房哲学』の思想系譜とリベルタン文学としての位置」を関西学院大学法学部、外国語研究室発行の『外国語外国文化研究』XVIに発表した。本論は『閨房哲学』に見られる思想系譜をテクストの分析から調べるとともに、この作品がリベルタン文学のなかでどのような位置を占めるのかを明らかにしようとしたものである。『閨房哲学』には著者の名前を明示しながら言及される思想と名前を伏せたまま引用される思想とがあり、本論ではこれらを分けて分析した。また、リベルタン文学とはどのような文学を指すのかについて「リベルタン」という語の意味の変遷に注目して考えた。「性」と「哲学」がなぜ結びつくのか、その結び付きの普遍性についても考察した。本論はリベルタン文学がなぜ「性」と結びつくのか、「性」の果たした役割は18世紀においてどのようなものだったのかを考えたものであり、研究課題の一つの成果である。 2013年の秋から冬にかけて、イギリスの大英博物館で春画展が開かれた。年末にロンドンに行き、博物館が所蔵する貴重な作品を見ることができた。フランス18世紀のリベルタン版画と日本の江戸時代の春画の比較はまだ緒に就いたばかりだが、面白いテーマだと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
課題であった『閨房哲学』の翻訳を完成させることができた。これは目的であったリベルタン文学の紹介に資することになるであろう。またフランス革命前の混沌とした時代に「性」が果たした役割を論文で示すことができた。しかしながら、リベルタン文学の全体に視野を広げるまでには至っていないので、今後それが課題になる。
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Strategy for Future Research Activity |
①リベルタン文学の流れを正確に把握するために、対象作品を広げながら、全体像を把握することに努める。 ②反宗教的なリベルタン思想との関連性をより詳細に調べる。 ③リベルタン文学がフランス革命を導く意識変革にどのように関わったのかを、「性」の果たした役割からさらに検討する。 ④集めたリベルタン版画と春画を比較検討して、これらの版画が果たした役割を明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度の図書購入価格が予定よりも安かったため。 本年度の図書購入費用にあてる。
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