2012 Fiscal Year Research-status Report
アイルランド語文献と音声資料による近代アイルランド言語文化の多角的研究
Project/Area Number |
24520377
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Konan Women's University |
Principal Investigator |
谷川 冬二 甲南女子大学, 文学部, 教授 (50163621)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
梨本 邦直 法政大学, 理工学部, 教授 (30340748)
池田 寛子 広島市立大学, 国際学部, 准教授 (90336917)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 国際研究者交流、アイルランド / 17世紀 / 18世紀 / 言語 / 歴史 / 文学 / 詩学 / 伝統 |
Research Abstract |
本研究の特長は、アイルランド語による第一次資料を研究対象とする点、および高度な学際性を求める点に著しい。 平成24年度から同26年度に至る3か年計画においては、予定通り、アイルランド語による物語的歴史記述の白眉とされるジェフリー・キーティング(Geoffrey Keating, アイルランド名Seathrun Ceitinn)著『アイルランド史』(Foras Feasa ar Eirinn)を研究対象として選択した。 初年度、準備期として、本研究の前身であるブライアン・メリマン(Brian Merriman)の『真夜中の法廷』(Cuirt an Mheon-Oiche)にあたった時の方法に倣い、この素読を始めた。現在、オズボーン・バーギン(Osborn Bergin)編の教科書版抄本を目安にして、そのおよそ3分の1まで読了したところである。 成果の公開を前提とする以上、底本の選定がきわめて重要であった。具体的には、新しい研究成果を活かしているが青少年にふさわしくない内容がところどころカットされている前記バーギンの教科書版抄本を用いるか、いささか古いが歴史的に重要で、なおかつ電子版としてアクセス可能なパトリック・ディニーン(Patrick Dinneen)の完本を用いるか、が問題であった。両本を用いて読解を進めながら、教科書版に含まれる章を、完本をもとに読み解くことに落ち着いた。 実績と言えるほどのものはまだない。が、取り上げた章の原語テキスト、英訳、日本語訳、および注釈のセットは、確実に蓄積されつつある。合計11章分、上記の通り教科書版の約3分の1に相当する量である。本研究のような学術分野においては、この種の基礎資料こそが重要であると考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究の達成度は予定通りでない。しかし、その理由は、テキストForas Feasa ar Eirinnが予想以上に難しいテキストであった、というただ一点にあり、研究会の成員が減少したわけでも、頻度が落ちたわけでもない。さらにまた、難しさの要因は、文体、語彙への慣れ、テキストの背景の理解という避けがたくはあるが、時間とともに克服可能な種類のものである。 実際、克服しつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
特に変更すべき点はない、と考える。年に数回、京都アイルランド語研究会として集まり、ひとりが担当箇所の読解を示し、他の者が批評し、全員で改訂する。この愚直な作業の繰り返しである。言語、文学、文化、歴史等の研究者が一堂に会して知見を活かしつつ、最重要なアイルランド語文献を一語一句解読する作業を積み重ねていく。 しかしながら、この作業の過程で生まれる疑問が多々ある。これらを整理して、文字通りForas Feasa ar Eirinnの専門家と目される人物を講師として招きたい。この点、すでに、昨年度末渡愛した梨本邦直氏を中心に人選が進んでおり、現状では、当事業の交付申請書に記したとおりバーナデット・カニンガム(Bernadette Cunningham)氏が第一候補となっている。 なお、京都アイルランド語研究会に、二人、新たなメンバーが加わった。いずれも、アイルランド語文学研究あるいは歴史研究に関して業績のある研究者である。本研究が掲げる学際性、多彩な視点からの考察に、貢献が期待できる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
2012年度海外への渡航が2人予定のところが1人になった。また、2013年度は研究分担者である池田寛子広島市立大学准教授への分担金を当初予定の20万円から10万円に減額した。これらの費用は、海外への渡航を三人に増やすか、もしくは上記Cunningham氏招聘の原資とするかで消費される。前者は夏季に連合王国内北アイルランドにおいて開催予定の国際学会に最低2人が参加することが見込まれるからであり、後者は円安傾向が定着する中、講師招聘の実現を確実なものにするためであるが、本報告時点でどのように按分するかは未定である。5月11日、12日に予定されている次回研究会で方針が定まる。 その他は、予定通り、主として会議費に用いられる。
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Research Products
(8 results)