2013 Fiscal Year Research-status Report
アイルランド語文献と音声資料による近代アイルランド言語文化の多角的研究
Project/Area Number |
24520377
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Research Institution | Konan Women's University |
Principal Investigator |
谷川 冬二 甲南女子大学, 文学部, 教授 (50163621)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
梨本 邦直 法政大学, 理工学部, 教授 (30340748)
池田 寛子 広島市立大学, 国際学部, 准教授 (90336917)
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Keywords | 国際研究者交流・アイルランド / 17世紀 / 18世紀 / 言語 / 歴史 / 文学 / 詩学 / 伝統 |
Research Abstract |
ジェフリー・キーティング(Geoffrey Keating, Seathrun Ceitinn)が著した『アイルランド史』(Foras Feasa ar Eirinn)は、アイルランドの文化研究において、必読の書のひとつである。特徴的な物語的歴史記述は、言語的には、以降の近代的散文の範となったとされる。歴史的には、宗教改革前にブリテンからアイルランドに移り住んだオールド・イングリッシュと呼ばれる人々の存在意義を高めようとしたとされる。文学の上では、のちにケルトの名で一括される物語群に素材を提供したとされる。すなわち、近現代のアイルランドを構成する諸要素が17世紀の時点でいかなるものであったかを、この著作は明らかにしうる。 このことは、この著作を一次資料として、すなわちアイルランド語で読み解くことの重要性を示す。訳者の介在は、彼による編集の時点の地政学的状況をテキストに加えてしまうからである。原典にあたれば、アイルランドのみならずヨーロッパ全体を見渡す視座から、宗教改革期を再考することが可能になる。 研究代表者、研究分担者、本研究の前身であるブライアン・メリマンの読解に共にあたった者たちは、さらに二名の新たなメンバーを加えて、「京都アイルランド語研究会」として、この『アイルランド史』を、オズボーン・バーギンによる教科書版とパトリック・ディニーンによる定本とを対照しつつ、読み解く作業を続けている。メリマン研究のやり方を踏襲し、原語テキスト、英訳、日本語訳を蓄積中である。参加者が学問的拠り所としているのは言語学、歴史学、文学等々幅広い。この研究は、それだけの学際性を必要としている。 なお、10月に、キーティング研究者として知られるタイグ・オドラーニャ氏を講師として招聘し、セミナーを開くことが決定している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
達成度は、残念ながら、予定通りではない。昨年も報告した通り、テキストForas Feasa ar Eirinnが難しい。ただし、昨年とやや異なり、文体や語彙の問題は克服しつつある。現在、難しさの因は、テキストの背景に対する各人の解釈の相違に変化しつつある。そして、これは研究会の参加者それぞれの学問的立脚点の相違に関わることがらである。 量をこなすという点では、物足りない。しかしながら、考察すべき点が見えるようになってきて一定の議論を経ずに読了とは言えなくなっている点を思えば、活動の質としては断然向上しつつある、と言えるかもしれない。
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Strategy for Future Research Activity |
特に変更すべきところはない、と考える。年に数回、京都アイルランド語研究会として集まり、ひとりが担当箇所の読解を示し、他の者が批評し、全員で改訂する。英訳、日本語訳を成果として残す。言語、文学、歴史等の研究者が集まっている利点を最大限に生かしつつ、愚直に作業を続けていく。 秋10月に、タイグ・オドラーニャ氏を講師として招き、研究会の作業から浮かび出てきた四つの演題で講義をしていただくことがすでに決まっている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
アイルランドより講師を招いて、セミナーを2013年度中に開く予定であったが、諸般の都合により延期となったため。 2014年10月に、メィヌース大学よりタイグ・オドラーニャ氏を講師として招き、セミナーを開く。テーマは以下のように決している。 1. Context (Historical background, purpose etc.), 2. Content (The unifying national epic of the Irish and Old English), 3. Style (Language, registrar and literary creativity), 4. Influence (Keating's work as exemplar and repository)
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Research Products
(10 results)