2014 Fiscal Year Research-status Report
ベケット作品/草稿におけるテクストと図:ライプニッツ的組み合わせ術と存在論の研究
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24520378
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Research Institution | Kobe Women's University |
Principal Investigator |
森 尚也 神戸女子大学, 文学部, 教授 (80166363)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ベケット / ライプニッツ / イメージ / バロック / 通約不能性 / 草稿 / 数学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、「ベケット作品/草稿におけるテクストと図:ライプニッツ的組み合わせ術と存在論の研究」という研究題目のうち、その一部となる論文一本、3つの研究発表と草稿研究を行った。 1.「追放者のトポロジーーベケットと運動のエチカ」(『サミュエル・ベケット:ドアは分からないくらいに開いている」(早稲田大学演劇博物館図録、2014年5月)。ベケット作品における「空虚な中心」をめぐる運動のパターンを分析。 2.「ベケットのフランス語詩と『メルシエとカミエ』に見る雨と放浪のイメージ表象」(日本サミュエル・ベケット研究会、早稲田大学、2014年7月5日)では、1940年代のフランス語詩、『メルシエとカミエ』雨や放浪のイメージ表象や運動パターンのなかに、ライプニッツ形而上学の痕跡を確認した。ベケットの故郷ダブリン周辺の地理的、気候的記述のなかにも、ベケットは放浪の運動の中心を「廃墟」におき、逃れられぬ「廃墟」をキリストと二人の泥棒の架刑図になぞらえた。この『ゴドー』にもつながるキリスト教的な観念から抜け出すこと、脱構築が『メルシエとカミエ』の主題として隠れていることを指摘した。 3.「ベケット作品における通約不能性:ピュタゴラス、クザーヌス、ライプニッツ」(日本ライプニッツ協会第6回大会、富山大学、2014年11月16日)で、自己と他者、自己と世界、自己と神が絶対的に交通が不可能な「協約不能性」として表現されていることを示した。 4.「ベケットの<バロック的唯我論>:「私はもう私とは言わないだろう」」(日本ライプニッツ協会、『モナドロジー』300年記念シンポジウム、学習院大学、2015年3月27日)。「孤独」の問題を掘り下げた。 5.草稿研究は、パリの国立図書館(リシュリュー)で、7月29日ー8月17日『ゴドーを待ちながら』のオリジナル・フランス語草稿(En attendant Godot)を研究した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
学会発表を利用して、テーマの探求を推し進めることができた。またパリの国立図書館での『ゴドーを待ちながら』の草稿研究にも、登場人物のすべてについて最初は固有名詞が指定されていなかったこと、謎の計算がテクストに記されていることなど、考察すべき問題が多くあった。 それらの謎について考え続けているが、まだ糸口が見つからない。パリの『ゴドー』草稿については、もうすこし見通しがついてから再訪の機会を設けたい。
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Strategy for Future Research Activity |
さらにテーマの追求を続けることと、これまで発表しながら論文化に至っていないものを論文にして発表をしたい。草稿については、英国レディング大学が一昨年入手したベケットの『マーフィー』草稿ノート6冊が最近公開されることになったので、この夏、研究滞在することにした。とりわけライプニッツ哲学に関する記述を見つけて帰りたい。 学会発表は国内でのライプニッツ協会や、アイルランド文学会IASILのほかに、海外でのベケット国際学会(2016年4月アントワープ大学)への応募も視野にいれて、研究を進めていきたい。
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Research Products
(4 results)