2016 Fiscal Year Annual Research Report
Texts and Tables in Beckett's Published texts and Manuscripts: A Study of Leibnizian Ars Combinatoria and Ontology
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24520378
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Research Institution | Kobe Women's University |
Principal Investigator |
森 尚也 神戸女子大学, 文学部, 教授 (80166363)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ベケット / ライプニッツ / テクストと図 / 無理数 / モナド / 微小表象 / 存在論 / ジョイス |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は、「ベケット作品/草稿におけるテクストと図:ライプニッツ的組み合わせ術と存在論の研究」の最終年度であり、この研究テーマを締めくくるにあたり、ライプニッツの影響がもっとも具体的に表現された小説『マーフィー』の草稿と、ベケットの代表作である演劇『ゴドーを待ちながら』の草稿研究は欠かせなかった。そこでレディングとパリの図書館で各2週間滞在し、レディングでは、2014年に公開されたばかりのベケットの小説『マーフィー』のための6冊のノートを中心に研究した。また、やはり1930年代のベケットの思考をなぞることができる「ホロスコープ・ノート」などを見た。6冊の「マーフィー・ノート」からはライプニッツに関するメモ書きは発見できなかったが、ベケットが描いたジョイスの似顔絵、数字、音符、三角数などの図が、混然一体となって「無理数」に象徴される言語化できないものをベケットが模索していることは読みとれた。その研究成果の一端は、10月のアイルランド国際文学会(IASIL JAPAN)で発表した。パリの国立図書館リシュリューでは、『ゴドーを待ちながら』の仏語草稿を一昨年に引き続き研究した。『ゴドー』のテクストには、断片化されているもののライプニッツの形而上学のキーワードを、すでにテクストのなかにいくつか見いだしていたのだが、今回、出版稿にはない、草稿のみにみられるキーワードを一語読みとることができた。 論文としては、第二次大戦後の1940年代にベケットが仏語で書き始めた小説『メルシエとカミエ』論と『初恋』論の2本を発表した。前者では、図表と組み合わせ術(ライプニッツの「予定調和」のアナロジー)、後者では、声の識閾と存在論の問題を、ジョイスやライプニッツを踏まえて、抽出した。 予定していた『クラップの最後のテープ』と『事の次第』における組み合わせ術と存在論をめぐる論文は次の課題となった。
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Remarks |
「無窓性」再考:サミュエル・ベケットの 〈バロック的唯我論〉は、日本ライプニッツ協会主催『モナドロジー』300 年シンポジウム、学習院大学、2015 年3 月27 日(金)の発表原稿をもとに加筆修正したもの。 『サミュエル・ベケットと批評の遠近法』(未知谷出版、2016)は、欧米のベケット研究者や哲学者12名を含む、計20名によるベケット論集である。
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Research Products
(6 results)