2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24520381
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
佐藤 伸宏 東北大学, 文学研究科, 教授 (70148724)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 翻訳 / 近代詩 / 比較文学 |
Research Abstract |
本研究は、19世紀末以降の英語・フランス語圏における日本近代詩の翻訳を対象として、それらの翻訳テクストに関するデータの整理と分析を行うとともに、その翻訳としての性格や特質を明らかにすることによって、海外における日本近代詩の紹介、理解と受容の実態を解明することを目的としている。平成24年度は、当初の計画どおり、本研究の対象である日本近代詩翻訳アンソロジーの収集と調査を行うことを中心的な課題として研究を行った。その結果、現時点で、研究対象期間に出版された12冊のアンソロジーを入手でき、それらのアンソロジー所収の翻訳テクストの書誌的調査とデータ整理、翻訳文献リストの作成を進めている。またその調査、分析をとおして、とくに1939年に刊行されたKuni Matsuo et Steinilber-Oberlin, Anthologie des Poetes japonais contemporains(Mercuru de France)が、内容および翻訳のあり方の面で極めて重要であることが明らかとなり、このアンソロジーを一つの基軸として日本近代詩の翻訳の問題を検討していくという方針を見定めることができた。従来ほとんど研究がなされてきていないこの領域において、本アンソロジーの詳細な考察は貴重な成果となるはずである。その考察の一端は、平成24年度中に口頭発表として公表した。これは、この共訳によるアンソロジーに関して、その翻訳底本や翻訳対象作品選択の基準、また翻訳テクストとしての性格や特徴、共訳という共同作業の内実などについて、翻訳テクスト自体の分析を通して詳細な考察を加えたものであり、近く論文として発表する予定である。今後も本アンソロジーを中心的な分析対象としながら、比較翻訳の手法を活用して研究を進めてゆく所存である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までの研究はほぼ当初設定した研究の目的・計画に沿って進めてきているが、調査・分析を進める中で、とくに上記のアンソロジー Anthologie des Poetes japonais contemporainsの重要性が明らかとなり、その考察に重点を置くことにした。また本アンソロジーの訳者である松尾邦之助とオーベルランが深く関わった雑誌France-Japonがその翻訳テクストの成立に大きく関与したことも判明したため、その雑誌の調査・研究も併せて行うことにした。これらは当初の計画からの若干の変更となる。上の「区分」において「おおむね順調に進展している」としたのはそのためであるが、しかし本研究の目的の遂行の上ではむしろ極めて重要な論点が明らかになったと言うことが出来る。France-Japonはパリで全7巻49冊(1934-40)発行された日仏文化交流誌であり、当時の日本文学翻訳の背景をなしたフランス-ヨーロッパにおける日本イメージ形成に重大な役割を果たしたものと考えられる。本研究の翻訳の考察をいっそう充実させるために、さらに検討を進めてゆく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度の間に研究対象である日本近代詩翻訳アンソロジーの主要なものが入手できたことを前提に、今後はそれらの翻訳テクストに関する書誌的データの整理を完了するとともに、初年度の調査・考察によって明確となった今後の研究の方針に沿って研究の進展を図る。具体的には、Anthologie des Poetes japonais contemporainsを中心に据えながら各アンソロジーの翻訳の性格、特質について、比較翻訳的な観点を積極的に活用しつつ具体的な分析を進めるとともに、そこで行われた翻訳の背景となる日本文学の理解・日本イメージの浸透の状況についても、France-Japonをはじめとする同時代の雑誌の調査を行うことによって考察を行ってゆく。この雑誌の調査はかなりの時間を要しはするが、19世紀以降の英語・フランス語圏における日本近代詩の紹介、受容の実態と動態を明らかにする上で不可欠の課題として積極的に取り組みたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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Research Products
(1 results)