2013 Fiscal Year Research-status Report
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24520381
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
佐藤 伸宏 東北大学, 文学研究科, 教授 (70148724)
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Keywords | 翻訳 / 日本近代詩 / 比較文学 |
Research Abstract |
平成25年度は、当初の研究計画に沿って、日本近代詩外国語翻訳アンソロジーの分析と検討、および西洋とくにフランスへの日本文学・文化紹介の重要な母体となった雑誌France-Japonの調査と検討を並行して進めた。前者の研究の成果に関しては、中原中也の詩の比較翻訳的考察を論点の一つに設定した論文をまとめた。これは上下2篇の論文であるが、審査の結果、学会誌に発表されることとなり、その上篇が本年度内に既に発表されている。また草野心平の詩についての考察を行い、これは講演の形で発表することとなったが、未だ活字にはしていない。一方、後者に関しては、ヨーロッパに初めて日本近代詩のほぼ全容を紹介したフランス語翻訳アンソロジーAnthologie des Poetes japonais contemporains(1939)について、共訳の問題やその背景にあった雑誌France-Japonとの関わりを視点に据えて、翻訳詩としての性格・特徴に詳細な考察を加えた論文を発表した。 以上の研究によって、複数の翻訳テクストの比較対照をとおして原文を照らし返す方法である比較翻訳的なアプローチの有効性を提示するとともに、19世紀末以降の英語・フランス語圏における日本近代詩の翻訳の性格と特質を、海外における日本近代詩の紹介・理解と受容の実態との相関において明らかにするという目的に沿った考察を展開できたと考えている。また翻訳アンソロジーにおいて多く行われている共訳という複雑な問題に関しても、一つの具体的な事例に則して見解を示すことが出来たが、この共訳の問題については、次年度も継続して検討を進める予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度当初の研究計画との関係で言えば、今年度はその研究目的・計画にそって十分な成果を挙げることができた。とくに極めて重要な日本近代詩フランス語訳アンソロジーAnthologie des Poetes japonais contemporainsについて十分な分量を費やした論文を発表したこと、また比較翻訳的な研究方法を有効に活用させた論文をまとめたことが、その主たる成果となるが、ただし検討すべき日本近代詩の外国語翻訳アンソロジーは数多くあり、考察しなければならない課題も研究を進める中で数多く浮上してきている。そうした多岐にわたる今後の課題を踏まえて、「おおむね順調に進んでいる」と評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度平成26年度は本研究期間の最終年度となるが、上記のように研究を進める中で多様な問題が浮上してきてもいるため、取り組むべき多様な研究課題のうち、とくに重要な問題に焦点を絞る形で考察を進めることにしたい。具体的には、数多くの日本近代詩翻訳アンソロジーが存在することを踏まえて、出来るだけ多くの事例を扱うことの可能なテーマを設定しつつ考察を行う予定である。例えば宮沢賢治の詩については、極めて多くの翻訳アンソロジーに収録されているが、同一詩篇の複数の翻訳が行われているとともに時代によって採録される詩の変化も認められる。そうした対象を中心的に取り上げることによって、19世紀以降の英語・フランス語圏における日本近代詩の紹介、受容の実態と動態を明らかにしてゆくことを最終年度の研究の推進計画としたい。また協訳の問題についても継続して考察を加える予定である。
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Research Products
(4 results)